セッション情報 一般演題

タイトル 196:

食道癌肉腫の1例

演者 高松 正憲(国立病院九州医療センター外科・臨床研究部)
共同演者 池尻 公二(国立病院九州医療センター外科・臨床研究部), 赤須 郁太郎(国立病院九州医療センター外科・臨床研究部), 川中 博文(国立病院九州医療センター外科・臨床研究部), 野中 道泰(国立病院九州医療センター外科・臨床研究部), 池田 陽一(国立病院九州医療センター外科・臨床研究部), 朔 元則(国立病院九州医療センター外科・臨床研究部), 吉田 晃治(国立病院九州医療センター外科・臨床研究部), 渡辺 次郎(国立病院九州医療センター病理), 竹下 盛重(国立病院九州医療センター病理), 村中 光(国立病院九州医療センター放射線科)
抄録 【はじめに】食道癌肉腫は全体の0.2~2.8%を占める稀な疾患である。今回我々は、ほぼ完全閉塞を来した巨大な癌肉腫の1例を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。【症例】52歳男性。平成13年12月ごろから食物のつかえ感を自覚し徐々に増悪。平成14年2月になるとほとんど経口摂取が不可能の状態となり近医を受診。生検で癌肉腫を疑われて、治療目的で当院に紹介入院となった。【経過】入院時るいそうが著明で、経口摂取は完全に不可能な状態であった。上部消化管造影で、胸部中下部食道に内腔をほぼ完全に閉塞する7cm大の表面多結節状の隆起性病変を認め、内視鏡検査では茎を有するのが認められた。血液検査では低アルブミン血症の他に白血球増多、CRP陽性を認めたが、CEA、SCC、CA19-9は全て正常であった。2月20日に食道亜全摘、胃管再建、後縦隔経路、頚部吻合術を施行した。病変は最大径9cm大の1型の腫瘍で、肉眼的深達度はT2と判断した。術後経過は極めて順調で、22病日に退院し現在外来通院中である。【病理組織学的所見】いびつな核を有する、N/C比の大きな類円形の腫瘍細胞が上皮様のパターンを示して増殖する、低分化扁平上皮癌の部分と、紡錘形の腫瘍細胞が錯状に増殖する肉腫様の部分が混在しており、一部に多核の巨細胞や類骨も認められた。免疫染色では両者とも上皮系のマーカーであるケラチンには部分的に染まり、非上皮系のマーカーであるVimentinにはびまん性に染色された。以上から組織学的診断は“いわゆる癌肉腫”とした。【考察】食道癌肉腫は、50~60台の男性に多く、好発部位は胸部中部という一般的な食道癌と同じ分布をもつが、肉眼形態は本症例のように有茎あるいは亜有茎性のポリープ状を呈するものが90%を占めるという特徴を有している。予後は比較的良好とされているが、最近はむしろ脈管侵襲、リンパ節転移の頻度が高いという結果も出ている。本症例は深達度smでリンパ節転移も無く、予後は良好と期待できる。【まとめ】稀な食道癌肉腫を報告した。本症例のように大きさ、症状の割には進行度早期の結果が期待できるので、積極的な外科的治療が予後改善に寄与するものと思われる。
索引用語 食道癌, 癌肉腫