抄録 |
切除不能な大腸癌肝転移に対し、肝動注療法は直接効果を期待できる局所療法であるが、解離性大動脈瘤を伴う症例に対する安全性や有効性については不明である。今回我々は、同時性肝転移切除術後に残肝再発を来した解離性大動脈瘤を伴う大腸癌症例に対し、左総腸骨動脈のreentryを介してreservoir catheterを挿入して肝動注療法を施行しているので報告する。 症例は71歳、男性。2001年1月10日、肝転移を伴うS状結腸癌に対してS状結腸切除術+ D2ならびに肝部分切除術(S2, S4, S6)を施行した。この際、術後肝動注療法が必要となることを想定し、胆嚢摘出術ならびに右胃動脈結紮術を施行した。原発巣はS, dors, 2型, 4.5×2.2 cmで、中分化腺癌、H2, P1, ss, n1(+), h(+), stage IVであった。外来にてHCFU内服の上経過観察していたところ、4月8日残肝再発が明らかとなったが、肝転移は両葉に多発しており、切除不能と判断した。血管造影では胸部下行大動脈遠位部にentryを認め、左総腸骨動脈に至る大動脈解離であり腹腔動脈は解離腔より起始していた。腹腔動脈造影を施行後DSMを併用した化学塞栓療法を施行した。解離性動脈瘤の発症は16年前であり、画像上安定化していることから、本人と家族のinformed consentを得た上で、6月20日左総腸骨動脈のreentryを介し偽腔を経てGDA coil法にてreservoir catheterを留置した。以後定期的にCPT-11肝動注およびDSMを併用した化学塞栓療法を施行しているが、現在までのところ明らかな有害事象は認められない。 |