セッション情報 一般演題

タイトル 285:

急性腎不全を合併したA型劇症肝炎にて死亡し、剖検にて日本住血吸虫およびサイトメガロウイルス感染が指摘された1例

演者 山下 晋作(麻生飯塚病院)
共同演者 上田 哲弘(麻生飯塚病院), 巻幡 徹二(麻生飯塚病院), 本村 健太(麻生飯塚病院), 小柳 年正(麻生飯塚病院), 坂本 茂(麻生飯塚病院)
抄録 A型劇症肝炎に急性腎不全を合併し血漿交換、CHDF、ステロイド投与などの治療をおこなうも死亡し、剖検にて日本住血吸虫の虫卵およびサイトメガロウイルス感染がみられた症例を経験したので報告する。症例は58歳男性。筑後川流域出身。常習飲酒家であり、数年前当院にて軽度肝障害および糖尿病を指摘されるも放置。H14年5月8日頃より全身倦怠感、発熱があり近医受診後当院紹介入院。入院時の血液検査結果はWBC 23830/μl(異型リンパ球 54%)、AST 19390U/l、ALT 10170U/l、T.Bil 7.2mg/dl、BUN 65mg/dl、Cr 8.6mg/dl、PT 16.6%、IgM-HA抗体陽性でありA型劇症肝炎急性型および急性腎不全と診断した。なおIgM型CMV陰性、IgG型CMV陽性であった。入院時無尿、肝性昏睡2度であり、血漿交換、CHDFなどの治療を行なった。脳浮腫による痙攣もあり気管内挿管しグリセオールにて治療した。脳浮腫は改善、凝固系は保たれ腎機能も回復し自尿十分となった。6月初めには黄疸減少傾向がみられたが中旬より再び上昇傾向あり、ウルソを投与するも無効であった。また6月初めより好酸球増多を伴う発熱がみられ、ステロイド投与を開始した。その後血液培養でESBL産生のE.coliが検出されセフメタゾールを約2週間投与した。6月半ばころより画像上肝の萎縮が進んでいき、腹水の貯留がみられた。黄疸遷延し、肝不全状態が続き7月22日死亡。剖検では肝において肝細胞壊死はそれほど広範でなかったが門脈域は拡大し、線維化、炎症細胞浸潤、高度の胆汁うっ滞を認めた。また門脈域に多数石灰化を伴う虫体がみられ、大腸粘膜下および肺の脈管にも検出された。また肝、肺、膵にサイトメガロウイルス感染の所見がみられた。日本住血吸虫感染がA型肝炎の重症化に関与したとの報告があり、本症例での検討を要する。また今回サイトメガロウイルスの再活性化が死因に影響したかどうか検討を要する。以上文献的考察を含め報告する。
索引用語 A型劇症肝炎, 日本住血吸虫