セッション情報 一般演題

タイトル 256:

大網捻転症の1治験例

演者 小西 洋平(大隈鹿屋病院)
共同演者 内野 謙次郎(大隈鹿屋病院), 新井 英和(大隈鹿屋病院)
抄録 症例;48歳、男性。主訴;腹痛。既往歴;20歳時、気管支拡張症。28歳時、虫垂炎手術。生活歴、家族歴;特記すべきことなし。現病歴;平成13年7月、右下腹部痛が出現し、8月下旬近医を受診、右鼠径ヘルニアを指摘された。10月5日頃腹痛が増悪し、10月8日急性腹症にて緊急入院となった。入院時現症;血圧110/60mmHg、脈拍60/分、体温38.5℃。結膜;貧血、黄疸なし。両肺にcrackleを聴取。右下腹部は膨隆、圧痛が著明で、右外鼠径ヘルニアを認めた。検査結果;白血球9400(好中球78%、リンパ球16%)、赤血球496万、血小板19万、CRP18.3mg/dl。血液ガスではアシドーシスは認めず。胸部CTでは両下肺野に気管支拡張像、ニボー像、浸潤影を認め、腹部CTでは結腸肝弯曲部から骨盤腔にかけて、腹壁より後方で小腸、結腸より前方に、渦巻状に回転する索状構造を呈する8×5×15cm大の腫瘤を認め、その中心部には高濃度の軸様構造物を認めた。経過;急性腹症に関しては、腸間膜の炎症性病変(脂肪織炎)、腹壁・腸間膜の腫瘍性病変(悪性リンパ腫、脂肪肉腫等)も鑑別診断に挙げた。血清補体価は正常、抗核抗体等の自己抗体、腫瘍マーカーは陰性。注腸造影では横行結腸の一部に鋸状の狭窄を認めたが、腫瘤性病変は認めず。補液、抗生剤点滴にて症状は軽減したが、大網捻転症を疑い、10月17日開腹術を施行した。腹腔鏡による観察にて、大網は数回捻転し腫瘤を形成しており、血性腹水も認めた。開腹術にて壊死した腫瘤部を摘出した(440g)。腫瘤は腹壁、腸管壁に軽度癒着していた。組織学的には広範な脂肪壊死を認めたが、腫瘍性変化、血管炎等は認めなかった。後日、右外鼠径ヘルニアに対して根治術を行い、完治退院した。考察;大網捻転症は大網の一部または全部が捻転し、捻転部より末梢の血行障害を生じ、腹痛を主訴として発症する比較的まれな疾患である。本邦では数十例の報告があるが、ほとんどは急性虫垂炎の術前診断にて緊急手術が施行され、診断が確定している。本例では腹部CTにて特徴的な中心部に高濃度の軸様構造物を有する渦巻状の索状構造を認め、これにより、術前に診断を成し得た。
索引用語 大網捻転症, 腹部CT