セッション情報 一般演題

タイトル 88:

結腸原発Adult T-cell leukemia/lymphomaの1例

演者 日高 秀樹(宮崎医科大学 第一外科)
共同演者 佛坂 正幸(宮崎医科大学 第一外科), 上田 純二(宮崎医科大学 第一外科), 池田 拓人(宮崎医科大学 第一外科), 江藤 忠明(宮崎医科大学 第一外科), 谷口 智隆(宮崎医科大学 第一外科), 岩田  鉱司(宮崎医科大学 第一外科), 岩村 威志(宮崎医科大学 第一外科), 千々岩 一男(宮崎医科大学 第一外科)
抄録 Adult T-cell leukemia/lymphoma(ATL or ATLL)はレトロウイルスに属するhuman T-lymphotropic virus type-1(HTLV-1)の感染によって発症する末梢性T細胞系の腫瘍で、病態として白血病とリンパ腫の二つがある。急性型、リンパ腫型、慢性型、くすぶり型の4つの病型に分けられ、急性型やリンパ腫型は未だに標準的な治療法が確立されておらず、極めて予後が悪いとされている。今回我々は非常にまれな結腸原発のリンパ腫型ATLを経験したので文献的考察を加えて報告する。症例は65歳、男性。左下腹部の鈍痛が持続し、また、便秘と下痢を繰り返すようになった。近医の腹部レントゲン写真でサブイレウスと診断され、精査加療目的で当科外来を紹介された。大腸内視鏡検査でS状結腸に腫瘍による狭窄を認めた。生検にてmalignant lymphoma (T-cell type)と診断され入院。胸・腹部CT、ガリウムシンチでS状結腸以外には異常を認めなかった。血液検査で抗HTLV-1抗体陽性であった。病変がS状結腸に限局し、周囲組織への浸潤もないことから手術の適応と判断し、手術を施行した。術式は左結腸切除術で第三群までのリンパ節郭清を行った。切除標本の肉眼的観察では粘膜面に約3cm離れて2個の粘膜下腫瘍様の隆起を認めたが、これらは漿膜側で連続し、一塊となっていた。病理組織学的検査が行われ、免疫組織染色によりCD3とUCHL-1が陽性でL26(CD20)、CD79a、CD56、Ki-1(CD30)が陰性であることからT細胞性の悪性リンパ腫と診断された。また、CD2、CD3、CD4、CD25がそれぞれ陽性で、CD5、CD7、CD8がそれぞれ陰性であり、抗HTLV-1抗体陽性であることを考慮すると、リンパ腫型のATLと考えられた。リンパ節には組織学的に転移を認めなかった。経過良好で術後14日目に退院したがATLは極めて予後不良な疾患であり、3年生存率が10%未満とされている。しかし、結腸に限局したATLは極めてまれで、外科的に完全に切除できたことから、長期生存が期待できると考えられた。一般に化学療法による奏功率も低いとされているが、効果を示す場合もあるため、現在外来で化学療法(CHOP療法)を継続中である。現在術後2ヶ月を過ぎたばかりであるが、再発は認めていない。
索引用語 結腸悪性リンパ腫, ATL