セッション情報 一般演題

タイトル 260:

放線菌虫垂炎の一例

演者 古賀 裕(浜の町病院 外科)
共同演者 加藤 雅人(浜の町病院 外科), 古平 千津(浜の町病院 外科), 三宅 徹(浜の町病院 外科), 猪熊 匡子(浜の町病院 外科), 安井 大介(浜の町病院 外科), 小島 雅之(浜の町病院 外科), 大城戸 政行(浜の町病院 外科), 一宮 仁(浜の町病院 外科), 山本 一郎(浜の町病院 病理), 中垣 充(浜の町病院 外科)
抄録 症例は58歳、女性。2002年6月30日頃より下腹部痛を認め、改善しないため7月4日当院受診。37.3℃の発熱を認め、右下腹部に約5cmの圧痛を伴う腫瘤を触知した。WBCは8,800/μl、CRPは13.1mg/dlと炎症所見がみられた。腹部USでは、右下腹部に径4cmのhyperとhypoな部分の混在するmassを認め炎症性の腫瘤が疑われた。腹部CTでは、回盲部に径5cmの壁が増強される嚢胞状の腫瘤を認めた。周囲の脂肪組織の混濁が強く、膿瘍を形成した急性虫垂炎が疑われ緊急手術となった。開腹所見では腹腔内に腹水を認めなかった。虫垂先端は手拳大に腫大し大網が強固に癒着していたが、虫垂根部や回盲部は異常を認めなかった。型通りに虫垂切除術を施行した。剥離の際に黄白色の無臭濃汁が出たため細菌検査に提出した。摘出標本では、虫垂先端は約7cmに硬く腫大しており虫垂壁の肥厚を認めた。術後の経過は順調であった。術中に提出した濃汁の細菌培養は好気性・嫌気性ともに陰性であった。病理検査にてsulfur granuleを認めたため、放線菌虫垂炎の診断となった。腹部放線菌症は稀な疾患であり、慢性炎症を惹起し瘻孔を形成することもある。近年の抗生剤の発達で減少傾向にあるが、外科切除のみでは再発をきたすことがあり、長期間の抗生剤投与が必要とされている。文献上は外科切除のみでは約半数しか治癒せず、外科切除とペニシリンの長期投与療法では約90%の治癒率であるといわれている。本症例にもペニシリン長期投与を勧めたが、本人の希望でペニシリン投与せず経過観察となっている。放線菌虫垂炎の一例を文献的考察を加え報告する。
索引用語 放線菌症, 虫垂炎