セッション情報 一般演題

タイトル 308:

Non-alcoholic steatohepatitisに伴う硬変肝に肝細胞癌との鑑別困難な腫瘍を併発した一例

演者 内村 浩太郎(国立九州がんセンター 消化器内科)
共同演者 荒武 良総(国立九州がんセンター 消化器内科), 松尾 享(国立九州がんセンター 消化器内科), 畠中 文香(国立九州がんセンター 消化器内科), 中牟田 誠(九州大学 医学部附属病院 第3内科), 横田 昌樹(国立九州がんセンター 消化器内科), 澄井 俊彦(国立九州がんセンター 消化器内科), 井口 東郎(国立九州がんセンター 消化器内科), 舩越 顕博(国立九州がんセンター 消化器内科)
抄録 Non-alcoholic steatohepatitis(NASH)は,肝硬変に至る原因不明の肝障害として近年注目を集めている.我々は,NASHによる肝硬変患者に肝細胞癌との鑑別の困難な腫瘍を認めた症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.【症例】67歳,男性【病歴】元来飲酒歴なし.以前より脂肪肝及び糖尿病と診断され,通院加療を受けていた.2002年4月,肝腫瘍を指摘され当院に紹介受診,6月7日精査加療目的にて入院となった.【検査成績】検血にて軽度の血小板減少,生化学検査にて肝胆道系酵素の高値を認めた.また血糖値,HbA1cは軽度高値であった.また肝炎ウイルスマーカーはいずれも陰性であった.腫瘍マーカーはいずれも正常範囲であった.【臨床経過】入院後の血管造影にて肝S5及びS7に不整形の濃染像があり,CTAにてS3にlow-low pattern,S5にhigh-low pattern,S7にiso-low patternを,CTAPにてS5にfilling defectを呈するSOLを認めた.S7の腫瘍を生検するに,脂肪化を伴う軽度の異型肝細胞よりなり,高分化肝癌を疑う所見であった.また非癌部の生検像は大~小滴性の脂肪沈着及びpericellular fibrosisを伴う肝硬変像であり,NASHに矛盾しない所見であった.以上よりNASHによる肝硬変に高分化肝癌を合併している可能性が考えられたが,画像上の所見は高分化肝癌としては非典型的でありdisplasiaやAAH等の可能性もあるため経過観察とした.またNASHに対しては,糖尿病の治療も兼ねてピオグリタゾンを投与した.【考察】NASHは高脂血症や肥満,糖尿病やインスリン抵抗性を危険因子として発症する原因不明の肝疾患であり,欧米ではその20%程度が肝硬変に至るとされ,肝癌合併の報告も見られている.本邦では従来肝硬変への進行例は比較的稀とされてきたが,生活様式の欧米化に伴って症例数が増加しつつあり,肝硬変例や肝癌合併例の報告も散見されるようになった.【結語】NASHに伴う肝硬変患者に肝細胞癌との鑑別困難な腫瘍を合併した症例を経験した.
索引用語 NASH, 肝細胞癌