セッション情報 一般演題

タイトル 51:

興味深い画像経過を示した自己免疫性膵炎の一例

演者 小島 瑞穂(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科(第三内科))
共同演者 河辺 顕(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科(第三内科)), 伊藤 鉄英(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科(第三内科)), 有田 好之(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科(第三内科)), 久野 晃聖(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科(第三内科)), 明石 哲郎(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科(第三内科)), 大野 隆真(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科(第三内科)), 井上 直子(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科(第三内科)), 宜保 淳也(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科(第三内科)), 岩佐 勉(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科(第三内科)), 名和田 新(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科(第三内科))
抄録 症例は63才男性。主訴は膵腫瘤精査。55歳時膵頭部腫大精査目的にて当科入院。画像検査にて膵のびまん性腫大、主膵管のびまん性狭細化および IgG 高値を認めたため、自己免疫性膵炎(AIP)が疑われた。以後、自然経過にて膵腫大、IgGは改善。 61歳 特発性血小板減少性紫斑病を発症し、1年間ステロイド治療を受けた。その後もAIP の増悪は認めなかった。平成14年4月、当科外来の腹部USにて膵頭、体、尾部に径約15mmの低エコー腫瘤を計3ヶ所に認め、血液検査にてγグロブリンおよびIgGの高値 、好酸球増多がみられたため、AIPの再燃が疑われ精査加療目的にて当科入院となった。入院時検査では、末梢血液像にて好酸球増多(WBC 6510/μl、Eos 10.3%)を認め、血液生化学ではγグロブリンが1.961 g/dlと高値、またIgG4高値(1090m g/dl)を伴う高IgG血症(2343m g/dl)が認められた。血中膵酵素は膵型Amylase 150 U/l、Lipase 242 U/lと高値で、抗核抗体は陰性、低補体血症はみられなかった。膵内分泌能に異常を認めず、外分泌検査ではPFD test 48.1%と低下、PS testにて2因子 (液量、アミラーゼ分泌)の低下がみられた。上腹部MRIでは膵体尾部の軽度腫大および内部不均一を認め、主膵管の一部に狭細化を伴っていた。ERCPでは膵体尾部主膵管の限局性狭細像を認め、膵液細胞診は陰性であった。また膵体部の低エコー腫瘤部より膵生検を施行し高度の線維化を伴うリンパ球浸潤が認められた。以上よりAIPの再燃と診断し、自覚症状も出現しないため、初発時と同様、自然寛解を期待し経過観察するも、腹部超音波および上腹部MRIにて限局性腫瘤の増大および癒合が確認された。このためプレドニゾロン30mg/日の内服治療を開始したところ血液生化学検査値は速やかに正常化し、画像所見も治療開始約4週間後にほぼ正常範囲に改善した。現在、外来にて同剤2.5mg/日にて維持療法中であるが再燃兆候はなく経過良好である。限局性からびまん性膵腫大への進行性変化を腹部超音波にて観察し得た自己免疫性膵炎の一例を経験したので、若干の文献的考察を加えて発表する。
索引用語 自己免疫性膵炎, 臨床経過