セッション情報 一般演題

タイトル 212:

有機リン急性中毒後に急性膵炎および難治性膵仮性嚢胞を発症した一例

演者 河辺 顕(九州大学大学院 医学研究院 病態制御内科(第三内科))
共同演者 村尾 寛之(九州大学大学院 医学研究院 病態制御内科(第三内科)), 伊藤 鉄英(九州大学大学院 医学研究院 病態制御内科(第三内科)), 有田 好之(九州大学大学院 医学研究院 病態制御内科(第三内科)), 貞元 洋二郎(九州大学大学院 医学研究院 病態制御内科(第三内科)), 原田 直彦(九州大学大学院 医学研究院 病態制御内科(第三内科)), 中野 賢二(九州大学大学院 医学研究院 臨床・腫瘍外科), 山口 幸二(九州大学大学院 医学研究院 臨床・腫瘍外科), 田中 雅夫(九州大学大学院 医学研究院 臨床・腫瘍外科), 中野 逸郎(中野医院), 名和田  新(九州大学大学院 医学研究院 病態制御内科(第三内科))
抄録 症例は72歳男性。平成13年10月、農作業中に意識消失しているのを家人に発見され、近医救命救急センターに搬送。意識レベルJCS III-300、自発呼吸停止、異臭、口腔内流涎、著明な発汗、縮瞳、血清コリンエステラーゼ低値を認め、さらに胃液および尿から有機リンが検出されたため、有機リンによる急性中毒と診断され集中治療を受けた。治療により全身状態改善するも、入院中から度々腹痛が持続し、また退院後も軽快しないため近医受診。膵酵素上昇および腹部超音波検査にて膵尾部に嚢胞が認められたため、精査加療目的にて平成14年2月当科紹介入院となった。当科入院時、心窩部に軽度圧痛あり、血清膵酵素上昇および腹部CTにて膵尾部に径7cmの嚢胞を認めた。急性膵炎、膵仮性嚢胞と診断し、絶食、蛋白分解酵素阻害剤の持続投与を開始した。約1ヶ月の治療にても嚢胞の縮小傾向は認められなかった。膵嚢胞と主膵管との関係を確認する目的で内視鏡的逆行性膵管造影を施行。膵尾部主膵管から嚢胞内への造影剤の流入を確認したため、膵外分泌抑制を目的としてサンドスタチンの追加投与を行った。しかしその後も嚢胞は縮小せず、超音波内視鏡下嚢胞穿刺術での嚢胞ドレナージを試みるも不成功であった。平成14年5月膵嚢胞・胃吻合術を施行。術後膵嚢胞は著明に縮小し軽快退院となった。有機リン中毒の合併症として膵炎の発症は知られているが、本症例も有機リン中毒により急性膵炎を発症し、難治性の膵仮性嚢胞を合併したと考えられ、貴重な症例と思われたため報告する。
索引用語 有機リン中毒, 膵仮性嚢胞