抄録 |
上部消化管は当初日本内科学会カリキュラムの内容と形式をそのまま踏襲していたが、コンピテンスを基盤とした新しいカリキュラム理論に基づいて大幅に改訂し、さらに消化器病学会専門医としてのプロフェッショナリズムおよび患者に対する態度を念頭において再改訂を行った。カプセル内視鏡、ダブルバルーン内視鏡の登場により注目されているmid GI(gastrointestinal)bleedingに関連して「中部消化管」の扱いについて討議されたが、菅野理事長の「消化管はひとつ」との考えに協調し、途中から下部消化管担当グループ(責任者:穂苅量太先生)と共同作業を行った。今回の発表では、上部消化管グループが担当した項目のうち、以下に示す主なカリキュラム改定点を中心に報告する。1.上部消化管内視鏡検査の扱い消化器病学会専門医として必要と考えられる病理所見を含めた最低限の知識、技能レベルを明記した。態度として、検査にあたり日本消化器内視鏡学会監修の消化器内視鏡ガイドライン第3版を参考にすること、拡大内視鏡、画像強調内視鏡などの最新技術について知る努力をすることなどを追加した。2.機能性消化管疾患の扱い アメリカのカリキュラムでは独立した項目になっていることから、できるだけ上部・下部消化管の区別をつけずに改訂するように努めた。3.慢性胃炎と萎縮性胃炎の独立記載日本におけるHelicobacter pylori 菌感染の重要性と萎縮性胃炎との関連の強さなどから、萎縮性胃炎の項目を慢性胃炎と独立させて記載した。4.既存のガイドライン、他学会、関連研究会などのガイドライン参照 日本消化器病学会が作成したガイドラインだけでなく、他学会や上部消化管疾患に関連する研究会などのガイドラインを、態度の項目に記載した。5.低侵襲治療、高齢化社会への対応 低侵襲で高齢者に対しても安全に施行できる食道癌・胃癌に対する光線力学療法(PDT:photodynamic therapy)など、保険適用になっている治療について態度の項目に記載した。 |