セッション情報 |
シンポジウム14(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化吸収学会合同)
機能性消化管障害の病態と治療
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タイトル |
消S14-12:腸管炎症によるserotonin reuptake transporterの遺伝子発現制御と機能性消化管障害の病態への関与
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演者 |
多田 育賢(島根大・2内科) |
共同演者 |
石原 俊治(島根大・2内科), 木下 芳一(島根大・2内科) |
抄録 |
(背景と目的)近年、腸管感染症が誘因となって過敏性腸症候群(IBS)や機能性デイスペプシア(FD)が発症することが報告され、機能性消化管障害(FGIDs)の病態に炎症が関わる可能性が示唆されている。しかし、その詳細な病態は不明な点が多く、特にセロトニン代謝との関連は明らかにされていない。我々は、serotonin reuptake transporter (SERT)に着目し、腸管炎症時および回復期の粘膜局所におけるSERTの遺伝子発現変化を検討し、FGIDsの病態への関与を考察した。(方法)検討1(マウスモデル):急性DSS腸炎および慢性腸炎モデル(SCIDマウスにSAMP1/YitのCD4陽性T細胞を移入)を作製し、炎症粘膜におけるSERTの発現をreal-time PCRで検討した。また、急性DSSモデルでは腸炎回復後60日目まで経時的にSERTと炎症性サイトカイン(MIP-2)発現を検討した。検討2:潰瘍性大腸炎症例(UC; n=21)の活動性粘膜、非活動性粘膜(治癒粘膜)、非罹患部位の粘膜よりそれぞれ生検を行い、SERTの発現をreal-time PCRで、炎症性サイトカインの発現パターンをPCRアレイで検討した(結果)検討1:急性および慢性腸炎モデルのいずれにおいても炎症粘膜でSERTの発現は有意に低下した。急性DSS腸炎モデルで低下した粘膜局所のSERTは、炎症が軽減した以降も低発現が長期間持続し、60日目でも前値への回復には至らなかった。検討2:UCでは活動性粘膜でSERTの発現は有意に低下していたが、SERTの発現低下は非活動性の治癒粘膜でも観察された。また、PCRアレイによる検討では、治癒粘膜においても種々の炎症性サイトカインの有意な発現が確認された。(結語)今回の検討から、腸管の炎症存在下ではSERTの発現が低下しており、腸炎回復後においてもSERTの発現低下が遷延することが明らかとなった。以上のことから、先行する腸管炎症はセロトニン機能障害を誘発し機能性消化管障害の病態に関わる可能性が示唆された。 |
索引用語 |
serotonin reuptake transporter, FGIDs |