抄録 |
【背景・目的】岩手県ではウイルス肝炎対策専門委員会を中心とした肝疾患診療ネットワークを2002年から行政、医師会の協力の下に構築してきたが2008年に肝疾患診療連携拠点病院の指定および医療費助成制度の導入に伴い、より肝疾患の治療効果が得られるようにとネットワークの見直しが行われ、現在、専門医療機関15施設、かかりつけ医61施設が参加し連携を図っている。今回、肝炎ウイルス検診の結果や医療費助成制度の現状、現状での診療状況および今後の課題について検討した。【成績】1) 肝炎ウイルス検診(2002年~2006年度実施):C型肝炎ウイルス(HCV)検診の累積受診者は151,857人で節目検診の受診率は38%(87,752人/39,6086人)であった。全体のHCV感染率は0.73%であった。B型肝炎ウイルス(HBV)検診の累積受診者は140,815人でHBs抗原陽性率は1.41%であった。2) 医療機関受診率:アンケートにて医療機関受診率を調査したところ、2002年から2009年の医療機関定期受診率はHCVキャリア50.7%、HBVキャリア46.2%であった。3) 医療費助成制度の現状:2008年から2010年度までの申請受付件数は996件で、内訳はインターフェロン(IFN)治療が668件、核酸アナログ製剤が328件であった。C型肝炎に対するIFN治療の申請件数は2008年度327件、2009年度180件、2010年度156件で、本県では年間782人の治療を見込んでいたが、達成率は2008年度41.8%、2009年度23.0%、2010年度19.9%であった。4) 県への治療効果報告数:2010年11月時点でC型肝炎に対するIFN治療効果報告は81例で著効60%、再燃24%、無効15%であった。5) C型肝炎に対するIFN治療未実施の理由:無症候性キャリアの場合は肝機能が正常であるといる理由が全体の60%を超えていた。また、60歳以降になると高齢であるからという理由が増えていた。【今後の課題】潜在しているキャリア性肝炎の掘り起こし、定期受診の勧奨および治療未実施者に対する治療勧奨、アウトカムの把握が必要と考える。 |