セッション情報 一般演題

タイトル 159:

虚血性大腸炎と腸管穿孔を伴い診断に難渋した大腸癌の1例

演者 與那嶺 吉正(琉球大学第一内科)
共同演者 金城 福則(琉球大学第一内科DELIMITER同光学医療診療部), 又吉 亮二(琉球大学第一内科), 川根 真理子(琉球大学第一内科), 砂川 隆(琉球大学第一内科), 豊見山 良作(琉球大学第一内科), 内間 庸文(琉球大学第一内科), 平田 哲生(琉球大学第一内科), 外間 昭(琉球大学第一内科), 金城 渚(琉球大学第一内科), 豊田 亮(同第一外科), 白石 祐之(同第一外科), 西巻 正(同第一外科), 前城 達次(与那原中央病院内科), 仲吉 朝邦(与那原中央病院内科), 佐久川 廣(琉球大学第一内科), 斎藤 厚(琉球大学第一内科)
抄録 症例は52歳男性。主訴は腹痛と発熱。既往歴はなし。平成13年11月中旬より下腹部痛,発熱が出現し11月28日近医入院。腸炎を疑われ抗生剤投与され改善し退院。12月4日に再び発熱と下腹部痛で第二回入院。腸炎を疑われ絶食と抗生剤投与で改善し12月19日に退院。12月末より下腹部痛,発熱出現。平成14年1月4日に同院受診し入院。大腸内視鏡検査(CF)で虚血性腸炎を疑われ,絶食,TPNの施行と抗生剤投与で改善。2月6日のCFで大腸癌を疑われ,精査加療目的で当院転院。当院入院時には発熱もなく,理学所見でも異常を認めなかった。血液検査では炎症反応はなく,CEAが20ng/mlと高値を示した。CFではS状結腸に管腔の1/3周を占める2型の進行癌の所見を認め,病理で中分化型腺癌であった。腹部CTでは肝S4,S5,S7に転移を認めた。3月12日に手術を施行。術式はS状結腸切除術,肝S5,S7の転移に対して肝部分切除術,S4の転移に対してラジオ波焼灼術を施行した。S状結腸と周囲の癒着を認めた。術後の診断では2型中分化型腺癌(深達度ss)でp-T3,N0,M1,H2,ow(-),aw(-),ly1(StageIV)であった。病理では癌部に深い潰瘍があり,その下の固有筋層が断裂しており,漿膜の炎症もあること,S状結腸と周囲の癒着もあったことから,癌の部分の腸管が穿孔し漿膜炎を起こし,抗生剤で改善したと思われた。穿孔が発熱,下腹部痛を繰り返した原因と思われた。大腸癌に虚血性腸炎および腸管穿孔を合併したと確定診断した。本症例は腸管の閉塞は認めず,虚血性腸炎の原因として動脈硬化が考えられた。大腸癌と虚血性腸炎は鑑別が難しいことがあり,本症例は両疾患と腸管穿孔に伴う腹膜炎の合併のため診断が難しかった。発症時に大腸癌が確認できなかったのは,腸管の炎症により,腫瘍がわかりにくかったためであり,炎症が改善した時点のCFでは周囲粘膜の炎症がなくなり腫瘍が明らかになったと思われた。炎症が治まった時点で早目にCFの再検を行うことが重要と思われた。
索引用語 大腸癌, 虚血性腸炎