セッション情報 シンポジウム2

タイトル S2-007:

当院における腹部悪性リンパ腫手術症例の検討

演者 小島 雅之(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 外科)
共同演者 植木 隆(九州大学大学院 臨床・腫瘍外科), 猪熊 匡子(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 外科), 古平 千津(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 外科), 三宅 徹(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 外科), 安井 大介(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 外科), 古賀 裕(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 外科), 大城戸 政行(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 外科), 加藤 雅人(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 外科), 一宮 仁(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 外科), 中垣 充(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 外科)
抄録 過去21年間に当院外科で経験した腹部悪性リンパ腫手術症例41例について、臨床病理学的検討を行ったので報告する。41例の内訳は胃リンパ腫(GML)21例、腸管リンパ腫(IML)11例(小腸10例、大腸1例)、腹腔内リンパ節リンパ腫6例と脾リンパ腫3例(その他)であった。症状は腹痛(51%)、食欲不振(24%)、体重減少(20%)、消化管出血(15%)、腹部腫瘤(15%)等非特異的なものが多く、一方で消化管穿孔も2例(5%、Lymphomaの浸潤による空腸穿孔及びリンパ節の腫大による血行障害に基づく回腸穿孔)に認められた。腹痛例はGMLで71%と他の部位のLymphomaに比べ多かった(p<.05)。又、症状の無いものも7例(17%)に認められた。緊急手術を行った症例は6例で、その原因は出血3例、穿孔2例、腸重積1例であった。平均年齢は63才、男性15例、女性22例で、女性の割合はIMLとその他のLymphomaで高い傾向にあった。中等度以上のPerformance status(PS)の低下は14例(34%)に、術前LDHの上昇は12例(29%)に認められた。全例のAnn Arbor stageは、I or I E 27%、II or II E 42%、III or III E 22%、IV 10%で、GMLやIMLでもStage III又はIVの症例がそれぞれ15%、45%に認められた。手術で根治的に切除できた症例はGML 67%、IML 45%、その他 44%で、Lymphomaの遺残があった症例は全体の44%であった。Working formulationに則った組織学的gradingでは、Low grade 24%、High grade 76%であった。術後の化学療法はCHOP療法を中心に34例(83%)に施行された。術死は3例全てGMLで、原因は2例がPD後の合併症、1例は出血からのDICであった。全体のFollow up期間は平均69カ月、5年生存率は65%で部位による生存率の差は認めなかった。緊急手術症例の予後は悪く、6例中4例が1年以内に死亡、5年生存率も32%であった(p=.003)。術死を除いた消化管ML 29例において更に詳しい検討を行ったところ、術前のLDHの上昇(6例、5年生存率0%、p=.006)、PSの低下(10例、同50%、p=.028)、Stage(III or IV、8例、同41%、p=.017)が予後不良因子であった。以上腹部悪性リンパ腫手術例の検討をおこなったが、MLの病態は多彩でそれぞれの症例にあった治療が必要と思われた。緊急手術を避けるべく、消化管MLはまず外科的に切除し、その後化学療法等を行う事が望ましいと考えられた。
索引用語 腹部悪性リンパ腫, 手術