セッション情報 一般演題

タイトル 52:

膵腫瘤を形成し膵癌との鑑別が問題となった自己免疫性膵炎の1例

演者 宮城 政剛(沖縄県立中部病院 内科)
共同演者 島袋 容司樹(沖縄県立中部病院 内科), 林 成峰(沖縄県立中部病院 内科), 菊地 馨(沖縄県立中部病院 内科), 慶田 喜秀(沖縄県立中部病院 内科)
抄録 今回我々は腹痛にて来院、腹部超音波検査にて膵頭部および膵体部に腫瘤を指摘されたが、膵癌を否定できず開腹膵生検にて自己免疫性膵炎と診断し、その後長期観察しえた1症例を経験したので、若干の文献的考察を加え報告する。症例:63歳女性、主訴:上腹部痛、既往歴:子宮筋腫、卵巣腫瘍にてTAH+BSO、糖尿病、現病歴:平成5年6月上腹部痛を訴え近医受診。上部消化管内視鏡検査では著変なかったが、腹部CT、超音波検査にて膵腫瘤を指摘され精査目的で当院紹介となった。経過:血清アミラーゼ、尿中アミラーゼの上昇は認めず黄疸も認めなかった。腫瘍マーカーはCA19-9 6U/ml以下 DUPAN-2 54 U/ml, エラスターゼ1 260 ng/dlといずれも上昇は見られなかった。腹部超音波検査では膵実質は頭部から尾部までび漫性に腫脹していたが、主膵管の拡張は認めなかった。ERCPでは膵頭部から膵体部にわたる膵管の狭細化を認めた。血管造影検査では膵全体の濃染は認めたが腫瘍濃染は認めなかった。また、エンケ-スメント等の血管浸潤を示す所見も見られなかった。超音波ガイド下吸引膵細胞診検査を施行したが悪性細胞は認めなかった。腫瘤形成性慢性膵炎を疑ったが膵全体癌も否定しきれなかったため、確定診断を得るため開腹膵生検を施行した。術中膵頭部に硬い腫瘤を触知し、また膵体尾部は一様に硬く腫大していた。膵腫瘤部分と周囲のリンパ節の術中迅速病理検査では悪性の所見は見られず慢性膵炎の所見のみであったためそのまま閉腹した。組織所見ではリンパ球や形質細胞の高度な浸潤と高度な繊維化がみられ慢性膵炎と診断した。その後抗核抗体を提出したところ40倍と上昇していた。以上、血液検査、画像、組織検査を総合して自己免疫性膵炎と診断した。症状や膵酵素の上昇が見られなかったため、診断後ステロイドを使用することなく9年間経過を観察しているが、この間、症状、膵酵素、CT所見ともに著明な変化を認めなかった。結語:画像上膵腫瘤を形成し血液検査、開腹膵生検より自己免疫性膵炎と診断した1例を報告した。9年間経時的に観察できた貴重な症例と思われた。
索引用語 自己免疫性慢性膵炎, 診断