セッション情報 シンポジウム1

タイトル S1-005:

肝細胞癌に対する治療戦略の検討

演者 前田 誠士(熊本大学 第三内科)
共同演者 葦原 浩(熊本大学 第三内科), 池田 公史(熊本大学 第三内科), 田中 基彦(熊本大学 第三内科), 藤山 重俊(熊本大学 第三内科), 冨田 公夫(熊本大学 第三内科)
抄録 <目的>肝細胞癌(HCC)の非手術的治療法には、その残存肝機能や腫瘍の状態に応じて多くの選択肢がある。また再発を高率に認めるために、再発後の治療にも留意する必要がある。今回我々は各治療法別の成績をもとにHCCの治療戦略を検討した。<対象と方法>1995年から2001年まで当科で初発から経過を観察しえたHCC 339例のうち、手術例、門脈本幹完全閉塞例、遠隔転移例を除いた312例を対象とした。腫瘍径3cm、腫瘍数3個以内のHCCは1998年までは経皮的エタノール注入療法(PEIT)で治療、1999年からはラジオ波熱凝固療法(RFA)で治療している。腫瘍径3cm超、腫瘍数4個以上の症例は経カテーテル的動注療法(TAI)もしくは動脈塞栓療法(TAE)で治療した。なお治療前には原則としてIVR-CTを施行し、肝容積、腫瘍個数や脈管浸潤、腫瘍のvascularity等の把握を行っている。<成績>初回治療はPEIT 71例、RFA 63例、TAI or TAE 178例で、3群間の背景肝病変、肝機能に有意差はなかった。腫瘍最大径(平均)と腫瘍個数(平均)はそれぞれ、PEIT群18.2±4.6mm、1.2個、RFA群で22.3±6.4mm、1.4個、TAI or TAE群で32.6±14.2mm、2.4個であった。局所再発率は2年でPEIT群14.0%、RFA群19.6%、TAI or TAE群31.9%、他部位再発は2年でそれぞれ9.3%、2.8%、27.0%であった。初回再発時の治療はPEIT群では手術1例、PEIT13例、RF3例、TAI or TAE7例。RFA群ではPEIT2例、RFA9例、TAI or TAE6例。TAI or TAE群ではPEIT5例、TAI or TAE67例、リザーバー動注1例であった。2年生存率はそれぞれ91.1%、98.4%、88.6%で、観察期間が短いためRFA群の長期予後はまだ不明であるが、5年生存率はPEIT群67.4%、TAI or TAE群で43.1%であった。<結語>PEIT、RFAはTAI or TAEと比較して有意に再発率が低く、腫瘍壊死効果が高いと思われる。しかし長期予後のためには腫瘍壊死効果に加え肝機能の温存が必要であり、肝機能や腫瘍の状態に応じた適切な治療法選択が重要である。当科では治療前には原則としてIVR-CTを行い、治療法選択の指針としている。再発に対しても初回治療と同様に、状況に応じた適切な追加治療を行うことで良好な長期予後が得られた。
索引用語 肝細胞癌, 局所治療