セッション情報 |
パネルディスカッション5(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会合同)
肝拠点病院網と肝診療均てん化の現状課題
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タイトル |
肝PD5-5:茨城県におけるHCVキャリア対策の現況
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演者 |
池上 正(東京医大茨城医療センター・消化器内科) |
共同演者 |
松﨑 靖司(東京医大茨城医療センター・消化器内科) |
抄録 |
茨城県においては、職域検診でのHCV抗体陽性者数を元にして算出すると、就労人口(20~69歳)169万人のうち、1.57万人(0.8%)のHCV抗体陽性者がいると推定され、さらにガイドライン上抗ウイルス療法が必要とされる患者はこれらのうち40%、すなわち約6300人と考えられる。平成20年度に開始された助成金制度の受給者数は、平成20年度で1,159名、平成21年度が807名、平成22年度は611名と減少傾向にあり、1年目受給者から算出すると当初制度開始後6年間で必要者数に到達する見通しであったが、現状を踏まえると6年後はおよそ必要者数の半数にしか至らないと予測される。受給者が増加しない要因として、(1)感染を知っているが、医療機関を受診しないキャリアの存在 (2)医療機関を受診したが、抗ウイルス療法に適した施設にアクセスできていないキャリアの存在 (3)感染を知らないまま潜在しているキャリアの存在 が考えられる。(1)に関しては、医療機関受診率の把握調査が必要であり、1昨年の本学会ワークショップにおいて、小規模ではあるが、自治体単位のフォローアップシステムの構築とその有用性について報告した。(2)に関しては、専門医の少ない当県においてはかかりつけ医の関与が不可欠であり、診療所からの紹介率増加を目標として紹介型の連携パスの構築・普及を進めている。(3)に関しては、HCV感染の多くが健診を契機に判明していることから、ウイルス抗体健診の重要性が示唆される。当県で平成22年に行った40歳時の肝炎検診において、全県で対象者は37,000人であったが、受診率は4.2%に過ぎなかった。しかしこの中で4名のHCV抗体陽性者が新たに発見された。また、当院関連施設の人間ドックのデータを元にすると、HCV抗体検査の受診率は、公的機関職員や個人、企業退職者などでは比較的高い(60~70%)ものの、一般営利企業では男女ともおよそ10~20%と低く、さらに派遣・パートタイマーに至っては受診者がほとんどいなかった。ウイルス検診の普及について、一般市民、雇用者の啓発を今後進める必要がある。 |
索引用語 |
助成金制度, 肝炎ウイルス検診 |