抄録 |
急性膵炎の治療は飛躍的に進歩し,10年前の死因の第1位は発症早期のhypovolemic shockであったが,現在ではショックが死因となることは稀である.しかし,重症膵炎に限ってみれば,死亡率は30%と高く,さらに壊死性膵炎に絞れば,死亡率はさらに高い.重症膵炎は急性膵炎全体の1割にすぎないが,現在でも死亡率が高い重篤な疾患であることに変わりはない.こうした重症膵炎に対して様々な治療が試みられてきた.膵を潅流する動脈から直接的に膵酵素阻害剤を注入し炎症を抑える治療,又,chemical mediatorに対する血液浄化療法の有用性が確立されてきた.今回われわれは,重症膵炎に対して動注療法及ぶ血液浄化療法が有効であった1例を経験したので報告する.症例は33歳の男性.隔日泡盛を5合飲酒する.5月の連休に飲酒量が増え,その後,臍周囲を中心に腹痛を認め,当院外来を受診.急性膵炎の診断にて入院となる.入院後,次第に尿量低下,BUN,Creの上昇を認めるようになると同時に,肺水腫による呼吸不全を認めるようになる.重症膵炎の診断にて,発症4日目に動注療法,持続血液濾過透析を導入する.以後症状は徐々に軽快し入院3ヵ月後に退院となる.今回の症例は,動注療法及び血液浄化療法が重症膵炎の有用な治療であると示唆された. |