セッション情報 シンポジウム2

タイトル S2-002:

低悪性度大腸MALTリンパ腫に対する抗生剤投与の効果

演者 菊池 陽介(福岡大学筑紫病院 消化器科)
共同演者 和田 陽子(福岡大学筑紫病院 消化器科), 久部 高司(福岡大学筑紫病院 消化器科), 松井 敏幸(福岡大学筑紫病院 消化器科), 八尾 恒良(福岡大学筑紫病院 消化器科), 岩下 明徳(福岡大学筑紫病院 病理)
抄録 低悪性度胃MALTリンパ腫の多くがH.pylori(H.P)除菌により消退することが明らかになるとともにH.P陰性の胃MALTリンパ腫や大腸MALTリンパ腫に対する除菌有効例の報告もみられるようになった.我々はH.P陰性でH.P除菌療法に準じた抗生剤投与により病変の改善が認められた低悪性度大腸MALTリンパ腫の3例を経験したので報告する.(症例1)70歳女性.主訴は腹部不快感.大腸内視鏡検査にて下部直腸に発赤調の表面平滑な粘膜下腫瘍を指摘した.生検にて低悪性度MALTリンパ腫と診断した。なお免疫染色でCD5は陽性であった.他臓器浸潤やリンパ節腫大は認めなかった。H.Pは陰性でEUS上病変は固有筋層におよんでいたが十分なインフォ-ムドコンセントの上H.P除菌治療に準じて抗生剤を投与した。10日後病変は内視鏡的に消失し生検標本上もリンパ腫の所見を認めなかった(Dis Colon Rectum,2002既報)。(症例2)80歳女性.主訴は下血。大腸内視鏡検査にて直腸からS状結腸にアフタや陥凹、潰瘍を伴う隆起など多彩な病変を認め、盲腸部にも病変を認めた。直腸の粘膜切除標本にて低悪性度MALTリンパ腫と診断した。他部位には異常はなくH.Pは陰性であった。高齢で心疾患の合併もあり手術不能であったためH.P除菌治療に準じて加療した。6ヶ月後の大腸内視鏡検査においてすべての病変が消退もしくは消失していた。(症例3)71歳男性。検診の便潜血陽性のため大腸内視鏡検査を施行。直腸Rsに表面結節状でまだらに発赤した長径約4cmのI型の隆起を認め、その周囲にも小隆起を数個認めた。生検にて低悪性度MALTリンパ腫と診断した。他部位には異常はなくH.Pは陰性であった。EUSにて主病変は漿膜に達しており手術を考慮したが、患者の拒否もあり合意の基に抗生剤投与による治療を選択した。抗生剤投与3ヶ月後の大腸内視鏡検査で病変はほぼ消退していたが7ヶ月後再び増大傾向を認めその後二度の追加抗生剤投与を行った。1年7ヶ月後の現在病変は完全に消失している。(まとめ)近年本例と同様の報告が相ついでいる。すなはち低悪性度大腸MALTリンパ腫に対してはその深達度にかかわらず抗生剤投与を第一選択の治療とすべきであると考えられる。
索引用語 MALT, 大腸