セッション情報 一般演題

タイトル 160:

若年健常女性に発症した壊死型虚血性大腸炎穿孔の一救命例

演者 藤田 逸人(佐賀医科大学 医学部 一般・消化器外科)
共同演者 濱本 隆浩(佐賀医科大学 医学部 一般・消化器外科), 阪本 雄一郎(佐賀医科大学 医学部 一般・消化器外科), 中房 祐司(佐賀医科大学 医学部 一般・消化器外科), 宮崎 耕治(佐賀医科大学 医学部 一般・消化器外科)
抄録 【はじめに】虚血性大腸炎は動脈硬化などの基礎疾患を有する高齢者に多い疾患とされてきた。近年、若年者における発症例が増加してきているが、ほとんどが一過性型であり、壊死型で緊急手術を要した若年症例の報告は少ない。今回我々は、壊死型虚血性大腸炎穿孔による汎発性腹膜炎に対し緊急手術を行い救命し得た、39歳健常女性の一例を経験したので、若干の文献的考察を加え報告する。【症例】39歳、女性。【既往歴】特記事項なし。【生活歴】常習性便秘(1回/4~5日)。【現病歴】平成14年1月20日、急激な腹痛を自覚し近医受診。発熱、腹部膨満を認め、同院に入院。翌21日、40℃台の発熱を認め、突然大量の下血を生じた。緊急大腸内視鏡検査を施行したところ、肛門より50cmの部位に大腸粘膜の壊死を認めた。ショック状態で当院へ救急搬送され、緊急CTで腹腔内出血と遊離ガスを認めた。【入院時現症】出血性ショックの状態であり、Hbは5.9g/dlと低下。SIRS(+)。腹部は膨満し、筋性防御を認めた。【入院後経過】1月21日、緊急手術施行。開腹時、腹腔内に多量の血液を認めた。下行結腸は約10cmにわたり明らかな全層壊死に陥り、約7cmの穿孔を認めた。同部より出血を確認、直ちに左結腸切除術を施行した。腹腔内洗浄後閉腹し、横行結腸とS状結腸の人工肛門を造設した。術後は血液浄化療法(PMX)を2回施行した。腹腔内膿瘍、創感染を生じたが、保存的治療で改善し、術後42日目に退院となった。【考察】虚血性大腸炎の約70%が左側結腸に好発し、若年者においても左側結腸に好発する。膠原病やホルモン剤内服との関連も報告されているが、常習性便秘の症例が多く、血管側因子よりも腸管側因子との関連が強いと考えられる。本例も常習性便秘を有しており、発症の一因と考えられる。【結語】若年健常女性の急性腹症において、虚血性大腸炎も鑑別疾患として考慮に入れるべきと考えられた。
索引用語 虚血性大腸炎, 汎発性腹膜炎