セッション情報 一般演題

タイトル 24:

胃前庭部の滑脱により発見された食道裂孔ヘルニア胃癌合併の一例

演者 矢ヶ部 伸也(佐賀医科大学 一般消化器外科 )
共同演者 北島 吉彦(佐賀医科大学 一般消化器外科 ), 松山 悟(佐賀医科大学 一般消化器外科 ), 宮崎 耕治(佐賀医科大学 一般消化器外科 )
抄録 【緒言】食道裂孔ヘルニアは小児と高齢女性に多いとされる。今回我々は高度の脊椎変形症と食道裂孔ヘルニアを合併し著明な食事摂取低下をきたした胃癌の1例を経験したので報告する。【症例】81歳女性【現病歴】食欲の著明な減退のため近医にて胃内視鏡検査施行され、胃体上部から胃角にかけて後壁に3型病変を指摘された。生検にてgroup4であった。手術目的に当科入院した。【入院時現症】胸椎の圧迫骨折による亀背を認める。腹部には異常所見なし。【入院時検査所見】Hg10.7g/dlと貧血を認める。その他異常認めず。腫瘍マーカーはCEA 3.1ng/ml, CA19-9 19 U/ml,AFP 3U/ml,TPA43U/l, CA125 6U/ml,CA72-4 3.0U/ml以下とで全て正常であった。【画像所見】胸部X線撮影にて縦隔影、心陰影の拡大を認め、横隔膜ヘルニアが疑われた。上部消化管透視にて噴門部及び前庭部の縦隔への突出を認めた。腫瘍は胃中部が主座であったが、病変の範囲は強度変形のため同定困難であった。胃内視鏡検査では体部から胃角に及ぶ3型進行癌を認め、生検にてgroup 5(well differentiated adenocarcinoma)であった。逆流性食道炎の所見は認めなかった。混合型食道裂孔ヘルニアを伴う胃癌と診断した。【手術】開腹時前庭部ヘルニアは自然還納していた。胃癌は進行癌であり、胃全摘及びD2リンパ節郭清を行った。食道裂孔部は弛緩を認めたため、縫縮し裂孔部を閉鎖した。【考察】今回の食道裂孔ヘルニアは噴門部の滑脱と前庭部の脱出とを認める混合型であった。これにより急激な食事摂取低下を来した機序が示唆された。前庭部が脱出する食道裂孔ヘルニアはあまり一般的ではないが、今回の症例の場合胃前庭部脱出の機転として胃体部腫瘍による壁変形と亀背が考えられた。 食道裂孔ヘルニアと胃癌との因果関係は不明であるが、食道裂孔ヘルニアは逆流性食道炎を併発するため噴門部癌の頻度が一般の胃癌の噴門部発生に比し高率であるとする報告もある。 今回は逆流性食道炎の所見はみられなかったが胃前庭部が縦隔内に滑脱し急激な食欲減退症状を来したため発見されたまれな症例と思われた。
索引用語 胃癌, 食道裂孔ヘルニア