セッション情報 一般演題

タイトル 130:

エカベトナトリウム注腸にて改善がみられたNSAIDs起因性大腸病変の1例

演者 藤本 千夏(宮崎医科大学 第2内科)
共同演者 宮田 義史(宮崎医科大学 第2内科), 沼田 政嗣(宮崎医科大学 第2内科), 山本 章二朗(宮崎医科大学 第2内科), 田原 良博(宮崎医科大学 第2内科), 岩満 章浩(宮崎医科大学 第2内科), 岩切 久芳(宮崎医科大学 第2内科), 中西 千尋(宮崎医科大学 第2内科), 宮路 紫織(宮崎医科大学 第2内科), 加藤 順也(宮崎医科大学 第2内科), 堀 剛(宮崎医科大学 第2内科), 林 克裕(宮崎医科大学 第2内科), 坪内 博仁(宮崎医科大学 第2内科)
抄録 (症例)48歳女性。1991年、成人T細胞白血病(ATL)並びに汎発性湿疹と診断、当院皮膚科で治療、経過観察されていた。1998年より両側変形性股関節症による疼痛に対し、近医にてジクロフェナク錠が処方されていた。2002年4月頃より食欲不振、腹痛、茶褐色水様性下痢が出現し内視鏡にて十二指腸潰瘍を指摘、抗潰瘍薬が投与され、ジクロフェナク坐薬、ジクロフェナクナトリウム注腸軟膏剤に処方変更、1日の総投与量約100mgを連日投与していた。5月14日、変形性股関節症の手術目的で当院整形外科に入院、5月20日左側人工股関節全置換術を施行された。5月22日より4~8回/日の水様性下痢と発熱を認め、当科紹介となり大腸内視鏡を施行し、上行、横行結腸に孤発生の潰瘍と、S状結腸、直腸に縦走潰瘍や不整形潰瘍を認めた。ATLの消化管病変や炎症性腸疾患、腸管感染症などを疑い繰り返し生検を行ったが、特異的病理所見は認めず、便培養、血液検査でも、原因を特定するに至らなかった。絶食、IVH管理を行い、開始2週間後より下痢は軽快、大腸潰瘍も軽度改善傾向を認めた。NSAIDs投与歴があり中止により臨床症状の改善を認め、生検病理では非特異的炎症の所見であったことから、NSAIDs 起因性大腸病変潰瘍型と考えられた。IVH開始1ヶ月後には便性状が正常化、炎症反応陰性となり、経口流動食を開始した。経口摂取による症状の再燃はないものの、S状結腸から直腸の潰瘍の改善が乏しかったため、エカベトナトリウム注腸療法(ガストローム 1.5g+微温湯 50mlを1日2回経肛門的投与)を試みた。患者が退院を希望したので、自己注入を指導し、退院後自宅にて継続してもらった。エカベトナトリウム注腸開始1ヶ月後の大腸内視鏡では、改善傾向に乏しかったS状結腸から直腸の潰瘍の治癒が促進されていた。(結語)今回、炎症性腸疾患に対する有効性が報告されているエカベトナトリウム注腸療法をNSAIDs 起因性大腸病変に試み、大腸潰瘍の治癒促進を認めた。本療法は炎症性腸疾患のみならず、他の大腸潰瘍性病変にも有効である可能性が示唆された。
索引用語 NSAIDs 起因性大腸病変, エカベトナトリウム注腸療法