セッション情報 一般演題

タイトル 170:

ステロイド投与後短期間にてカリニ肺炎を合併した潰瘍性大腸炎の1例

演者 柴田 道彦(産業医科大学 第三内科)
共同演者 成田 竜一(産業医科大学 第三内科), 山崎 琢士(産業医科大学 第三内科), 久米 恵一郎(産業医科大学 第三内科), 芳川 一郎(産業医科大学 内視鏡部), 大槻 眞(産業医科大学 第三内科)
抄録  症例は35歳、男性。2002年1月20日頃より下腹部痛、10回/日以上の粘血便が出現した。近医にて1月31日大腸内視鏡検査を施行され、全結腸に粘膜浮腫、びらん、発赤、粘液の付着がみられ、生検にて杯細胞の減少、好中球浸潤、陰窩膿瘍を認めたため潰瘍性大腸炎と診断された。2月4日当科に紹介となり、全大腸型潰瘍性大腸炎中等症と診断され、mesalazine 2250mgを開始し軽快した。しかし3月中旬より症状が再発したため、入院の上3月29日から経口prednisolone(PSL)40mgを開始した。その後症状は軽快し、4月12日からPSL 30mgに、退院後5月1日からPSL20mgに減量していた。
 5月9日より突然の発熱を認め、次第に乾性咳嗽、労作時呼吸困難が出現し、同月15日に当科外来を受診し胸部X線上両側下肺野に粒状影、索状影を認めたため緊急入院となった。同日胸部CTを撮影したところ両肺に非区域性に不均一なスリガラス影、粒状影、索状影を認めた。このため細菌性肺炎、異型肺炎、カリニ肺炎、サイトメガロウィルス肺炎の可能性を考慮し、PSLを15mgに減量するとともに、同日からceftriazone、erythromycin、sulfametoxazole-trimethoprim(ST合剤)、ganciclovirを開始した。また各種検査を行い、その結果β-グルカン 132.4 pg/mlと上昇し、喀啖からP. carinii抗原陽性(PCR法)を認めたためカリニ肺炎と診断し、ST合剤以外の薬剤を中止した。以後症状および胸部X線像は速やかに改善し、退院となった。
 一般に経口少量ステロイド投与症例においてカリニ肺炎が合併する場合は、投与開始後6ヶ月以上経過し、またCD4リンパ球が200/μl以下となった場合に多いとされている。本例はステロイド投与開始1.5ヶ月と短期間であり、ST合剤開始3日目に提出したCD4リンパ球数も507/μlで、HIV感染などの免疫不全状態も認められなかった。多くの潰瘍性大腸炎に対しステロイド治療が行われるが、本例のように発熱、乾性咳嗽などがみられた場合には、ステロイド短期投与でもカリニ肺炎の合併に注意し、速やかに治療を開始することが必要であると考えられた。
索引用語 潰瘍性大腸炎, カリニ肺炎