セッション情報 一般演題

タイトル 48:

炎症性多発性外分泌腺腫瘤および嗅覚低下を合併した自己免疫性膵炎の1症例

演者 大野 隆真(九州大学大学院 医学研究院 病態制御内科学)
共同演者 河辺 顕(九州大学大学院 医学研究院 病態制御内科学), 伊藤 鉄英(九州大学大学院 医学研究院 病態制御内科学), 鈴木 静(九州大学大学院 医学研究院 病態制御内科学), 有田 好之(九州大学大学院 医学研究院 病態制御内科学), 明石 哲郎(九州大学大学院 医学研究院 病態制御内科学), 井上 直子(九州大学大学院 医学研究院 病態制御内科学), 小島 瑞穂(九州大学大学院 医学研究院 病態制御内科学), 宜保 淳也(九州大学大学院 医学研究院 病態制御内科学), 藤澤 和明(藤沢内科), 名和田  新(九州大学大学院 医学研究院 病態制御内科学)
抄録  自己免疫性膵炎(AIP)は膵臓の小葉間導管細胞に対する自己免疫反応と推定されている。しかしその特異抗原をはじめとして病因には不明な点が多い。今回我々は涙腺、顎下腺の炎症性腫瘤および嗅覚低下を伴ったAIPの1症例を経験したので、AIPの病因を示唆する重要な症例と考え報告する。 症例は52歳女性。49歳時に両上眼瞼腫脹、嗅覚低下出現。50歳時に右顎下腺腫瘍摘出の既往あり。52歳時びまん性膵腫大を認め当科入院。両上眼瞼、左顎下腺に硬結および嗅覚低下を認めた。好酸球増多、γ-グロブリン、IgGの上昇、および膵内外分泌の低下が認められた。画像上、膵のびまん性腫大、主膵管の不整狭細化、下部総胆管の狭細化が認められた。膵生検および涙腺、顎下腺生検を施行し、リンパ球主体の炎症細胞浸潤および高度の線維化が認められた。以上の結果より、涙腺、顎下腺の炎症性腫瘤および嗅覚低下を合併した自己免疫性膵炎と診断し、ステロイド治療を施行した。ステロイド治療によく反応し、短期間のうちに膵腫大および涙腺、顎下腺の縮小が認められた。また、嗅覚低下の改善も確認された。 今回、我々が経験した1症例は膵臓をはじめとして涙腺、顎下腺といった外分泌腺特異的な自己免疫反応が関与していることが予想され、外分泌腺特異的な共通抗原の存在が示唆された。また、全身性に繊維化をきたす疾患としてMultifocal fibrosclerosisが知られているが、我々の症例では膵臓、涙腺、顎下腺以外には炎症性の線維化を来した臓器は認められず、またステロイド治療に対して良好な効果が認められた。今回我々が経験した1症例は外分泌腺特異的な自己免疫反応が発症に関与していると考えられ、自己免疫性膵炎の一病型としてMultiple Exocrine Autoimmune Syndrome という新しい疾患概念が示唆される。
索引用語 自己免疫性膵炎, 炎症性多発性外分泌腺腫瘤腺