セッション情報 |
シンポジウム2
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タイトル |
S2-004:当院における消化管悪性リンパ腫の診断と治療の現況
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演者 |
郷田 憲一(済生会熊本病院 消化器病センター) |
共同演者 |
多田 修治(済生会熊本病院 消化器病センター), 須古 博信(済生会熊本病院 消化器病センター), 神尾 多喜浩(同病理) |
抄録 |
【目的】胃悪性リンパ腫や症例数の少ない小腸・大腸の悪性リンパ腫に対して、標準化された治療法は、いまだ確立されていないのが現状である。今回、我々は過去10年間に当院において経験した消化管悪性リンパ腫の治療とその予後を臨床病理学的に検討したので報告する。【対象と方法】対象は1993年4月から2002年8月の間経験した83例(胃MALTリンパ腫39例、(MALT以外の)胃悪性リンパ腫31例、小腸悪性リンパ腫8例(MALT 1例含む)、大腸悪性リンパ腫5例)である。寛解率、生存期間等による各治療法の有用性について検討した。【結果】胃MALTリンパ腫除菌例30例中26例(87%)は除菌のみで寛解しており、最長9年2ヶ月間寛解を維持しており、現時点で死亡例はない(生存期間2ヶ月~9年2ヶ月;中央値2年1ヶ月)。手術された胃MALTリンパ腫9例は全例、術後5年以上寛解維持していた(生存期間5年3ヶ月~10年;中央値8年7ヶ月)。(MALT以外の)胃悪性リンパ腫において、組織学的にdiffuse large B-cell lymphoma(以下DL)が29例中26例(89%)であった。Follicular lymphoma(以下FL)を2例、T-cell lymphoma(以下TCL)を1例認めた。Stage IまたはIIの18例のうち、手術がなされた8例中5例(63%)、胃温存療法がなされた10例中6例(60%)に完全寛解が得られていた。小腸悪性リンパ腫は組織学的にDL 5例、FL 2例、TCL 1例であった。8例中5例に外科的切除がなされ、そのうち4例に術後化学療法が施行されていた。8例中3例が診断後、3ヶ月以内に死亡していた。大腸悪性リンパ腫は、組織学的にはDL 4例、FL 1例であった。5例中4例に手術が施行され、そのうち3例に術後化学療法が追加されていた。【結論】Stage Iの胃MALTリンパ腫に対する除菌療法は、長期予後の面からも有用と思われた。Stage IIまでの(MALT以外の)胃悪性リンパ腫おいては化学療法を主体とした胃温存療法により、外科的切除に匹敵する治療効果が得られる可能性が示唆された。小腸悪性リンパ腫は、他の消化管の悪性リンパ腫に比し、予後不良と思われた。 |
索引用語 |
消化管悪性リンパ腫, 診断と治療 |