セッション情報 | 一般演題 |
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タイトル | 72:肝硬変症に合併した成人臍ヘルニア嵌頓の3症例 |
演者 | 杉山 元(江口病院) |
共同演者 | 江口 有一郎(江口病院), 北原 賢二(佐賀医科大学 一般・消化器外科), 緒方 啓(久留米大学第二内科), 江口 尚久(江口病院), 佐田 道夫(久留米大学第二内科), 谷川 久一(国際肝臓研究所) |
抄録 | 【はじめに】成人臍ヘルニアは比較的稀な疾患であるが,我々は腹水貯留の既往がある肝硬変症を基礎疾患に持ち臍ヘルニア嵌頓を来たした3症例を経験した。【症例1】75歳女性。肥満歴がありC型非代償性肝硬変にて過去に数回の腹水貯留歴がある。荷物整理の際,腹痛を自覚。徐々に嘔気を伴う絞扼性の腹痛となり来院。腹部X線にてイレウス像を認め,腹部超音波,CTにて嵌頓した小腸を認め同症と診断。徒手整復に成功した。年齢,全身状態より根治術は行なわず,腹圧をかけない指導を行ない経過観察とした。【症例2】67歳女性。C型非代償性肝硬変にて約1年前に大量腹水貯留にて入院歴がある。掃除で下腹部に力を入れた後より臍部の強い腹痛あり来院。同症と診断し徒手整復を行った。以降,同様に生活指導を行い外来通院中である。【症例3】63歳女性。C型肝硬変,進行肝細胞癌にて2ヶ月前より大量腹水を認め利尿剤投与中。荷物を抱えた際,腹痛出現,2日後には臍部の膨隆と強い絞扼性の腹痛を呈し来院。同症と診断,徒手整復不能にて開腹しヘルニア修復術を施行し軽快した。【考案】腹水が貯留した肝硬変患者では,時として臍ヘルニアを認めるが,嵌頓し急性腹症を呈した報告は本邦では比較的稀である。症状としてイレウス症状とともに硬く膨隆した臍部に圧痛を認め,症状,理学所見からも比較的容易に本症を疑うことはできるが,腹部超音波やCTにて腸管の嵌頓を証明すれば診断は確定できる。治療として手術による根治術が絶対適応とされるが,非代償性肝硬変症を基礎に持つ症例が多く,術後の合併症も危惧される。したがって2症例は発症直後であり,まず徒手整復を試み,整復に成功したため根治術は行なわなかった。我々の経験した3症例は,ともに経産高齢の女性で,過去の腹水貯留時に臍ヘルニアが発生し,腹水の軽減とともに臍ヘルニアも消失した既往があり,また発症前に腹圧の上昇が生じうる作業をしていた。したがって同様の既往をもつ肝硬変患者には,生活において強い腹圧をかけないような指導も大切であると思われた。 |
索引用語 | 臍ヘルニア, 肝硬変 |