セッション情報 一般演題

タイトル 100:

原発性肝癌の生存率における性差

演者 道免 和文(廣徳会岡部病院 内科)
共同演者 重松 宏尚(佐賀県立病院好生館 内科), 入江 康司(佐賀県立病院好生館 病理), 大久保 英雄(廣徳会岡部病院 内科), 石橋 大海(国立病院長崎医療センター 臨床研究センター)
抄録 【背景と目的】原発性肝癌 (HCC) における生存率は男性に比較し,女性で有意に延長しているとする論文が散見される.しかし,生存率の有意差の原因を性ホルモンに求めた報告を除き,性差の原因を解析した論文は渉猟しえない.HCCの生存率における性差について解析した.
【方法】1989年から2000年までの12年間に佐賀県立病院内科に入院したHCC 704例(男性487例,女性217例)の生存率ならびに臨床的因子について検討した.
【結果】1-, 3-, 5-, 7年生存率は男性の67.7, 40.6, 23.8, 8.7 %に対し,女性では73.5, 50.3, 26.3, 15.4 %と有意に延長していた(p値:0.0167).しかしながら,腫瘍径3 cm以下あるいは単発例という条件を等しくすると生存率の有意差は消失した(3cm以下ではp値:0.6589, 単発ではp値:0.7004).HCC診断時における年齢,ウイルスマーカー,AFP値,肝硬変の有無,腫瘍径 (3 cm以下あるいは3 cmより大きい),腫瘍個数 (単発か非単発),門脈塞栓の有無,Child's grade,腫瘍発見までの検査頻度 (AFP,超音波検査) の各因子についての解析では年齢(男性64.2歳,女性68.2歳),腫瘍径(3cm以下は男性49.5%,女性61.3%),腫瘍個数(単発は男性46.6%,女性57.1%),門脈塞栓の有無(塞栓は男性18.1%,女性8.8%),腫瘍発見までの検査頻度(定期的検査は男性19.3%,女性28.1%)において性差を認めた.
【結論】HCC発見時において男性に比し,女性では腫瘍径が小さく,単発例が多く,腫瘍塞栓例が少ないという結果が得られた.これらの結果はHCC発見までの検査頻度が女性の方がより緊密であることに起因する.HCCの早期発見により生存率は延長し,同時に生存率における性差は消失すると推定され,HCCの早期発見の有用性があらためて示された.
索引用語 肝癌, 性差