セッション情報 | 一般演題 |
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タイトル | 4:高齢者の胃潰瘍穿通に対して内科的保存療法にて治癒し得た1例 |
演者 | 熊谷 貴文(佐賀医科大学 内科) |
共同演者 | 小田 佳代子(佐賀医科大学 消化器内科), 吉川 敦(佐賀医科大学 消化器内科), 藤瀬 剛弘(佐賀医科大学 消化器内科), 大谷 響(佐賀医科大学 消化器内科), 中原 伸(佐賀医科大学 消化器内科), 綱田 誠司(佐賀医科大学 消化器内科), 坂田 祐之(佐賀医科大学 消化器内科), 岩切 龍一(佐賀医科大学 消化器内科), 藤本 一眞(佐賀医科大学 消化器内科) |
抄録 | 高齢者の消化管潰瘍は自覚症状が乏しいために発見が遅れることがある。今回高齢者の消化管潰瘍が穿通状態にて発見され、内科的保存療法にて治癒し得た1例を経験したので報告する。 【症例】83歳、女性 【主訴】黒色便、便秘 【現病歴】高血圧、糖尿病、高脂血症にて当院循環器内科外来通院中であった。平成14年7月中旬より、便秘傾向、黒色便を認め、7月20日頃より心窩部痛が出現したため外来を受診した。血液検査上、Hb 6.7g/dl、BUN 37.6mg/dl、Cr 0.63mg/dlで胃潰瘍の既往があったことから消化管出血を疑い上部消化管内視鏡検査を施行。胃体部小弯に巨大潰瘍を認め、潰瘍底にはもう一段あり、膵臓の露出と思われる黄白色の構造物を認めていたため緊急入院となった。 【経過】腹部CTでは胃体中下部小弯やや後壁よりに、膵臓に接して、最大径2cm程の範囲で粘膜、筋層の欠損を認めるが、CT上周囲に明らかな液体貯留やfree airはみられなかった。高齢で基礎疾患があることから、厳重な管理下で保存的治療を行うこととなった。入院後、絶食とプロトンポンプ阻害剤静注、及び抗生剤点滴を開始した。入院第10病日の内視鏡検査では、穿通していた潰瘍底は塞がり潰瘍の深さも浅くなり改善傾向を示した。翌日より食事を開始し、プロトンポンプ阻害剤は内服に変更した。第25病日の内視鏡検査では潰瘍は著明に縮小し、潰瘍底であった部分にも完全に再生上皮を認め、経過良好のため8月22日退院となった。 【考察】高齢者消化性潰瘍の特徴として、(1)一般に高齢者例は疼痛に対する閾値が高く比較的症状の乏しい例が多いこと、(2)潰瘍穿孔をきたしても症状に乏しく筋性防御の局所所見が弱いこともある、が挙げられる。本症例でも胃潰瘍穿通にまで来たしているものの自覚症状に乏しく、貧血の進行と黒色便にて消化管出血を疑い、内視鏡検査を行わなければさらに発見が遅れ、重篤な状態になっていたと考えられた。基礎疾患のある高齢者を外来経過観察する場合は、貧血の進行には十分注意するべきであると思われる。 |
索引用語 | プロトンポンプ阻害剤, 保存的治療 |