セッション情報 一般演題

タイトル 306:

癌性リンパ管症を伴い急激な経過で死に至った肝細胞癌の一剖検例

演者 荒武 良総(国立病院九州がんセンター 消化器内科)
共同演者 松尾 享(国立病院九州がんセンター 消化器内科), 畠中 文香(国立病院九州がんセンター 消化器内科), 田口 健一(国立病院九州がんセンター 病理), 内村 浩太郎(国立病院九州がんセンター 消化器内科), 横田 昌樹(国立病院九州がんセンター 消化器内科), 澄井 俊彦(国立病院九州がんセンター 消化器内科), 井口 東郎(国立病院九州がんセンター 消化器内科), 船越 顕博(国立病院九州がんセンター 消化器内科)
抄録 症例は69才、女性。既往歴として22才時に肺結核の内科治療歴がある。1999年4月HCV抗体陽性肝細胞癌の診断で当科にて治療を開始した。S8径2cmの肝細胞癌に対し当初PEITを施行したが痛みが強いため中止し、1999年6月3日TAEを施行した。その後2000年4月20日S3, S8, S7に多発性の再発を認めTAIを施行し、2000年12月S2, S3, S8の再発に対しPEITを施行した。2000年11月腹部CTにて右副腎に径23mmの転移巣を疑わせる所見を認め、また少量の腹水の出現を認めた。2001年4月3日腹部CTにて肝S8に径12mmの再発を認め、右副腎の転移巣は35mmに増大し、左副腎にも径20mmの転移を疑わせる腫瘤の出現を認めた。2001年6月左側胸部皮下に径1cmの硬結が出現し皮膚転移と思われた。2001年6月25日左肩甲骨の骨転移の加療目的に再入院した。放射線治療を行い疼痛はほぼコントロールされたが、7月12日より呼吸困難が出現し、肺炎と右胸水の貯留を認めた。CT上は肺炎、両側胸水、右肺門リンパ節腫大、癌性胸膜炎、多量の腹水、腹膜播種の所見を認めた。画像所見、呼吸状態は急速に悪化し、7月21日呼吸不全で死亡した。剖検では、肝内に多中心性に肝細胞癌が多発しており、外側区域のものは紡錘形細胞が出現しておりいわゆる肉腫様肝癌の像であった。胸腔内は癌性胸膜炎の状態で、腫瘍は肺門部に浸潤し一部腫瘤を形成していた。組織学的には右肺は癌性リンパ管症の状態であった。その他皮膚、両側副腎、横隔膜に浸潤転移を認め、腹膜、腸間膜には播種を認め癌性腹膜炎の状態であった。肝細胞癌の遠隔転移において癌性リンパ管症の報告は少ない。今回われわれは、肝細胞癌の経過中に広範な遠隔転移を伴い、癌性リンパ管症による腫瘍浸潤を呈し急激な経過で死に至った一剖検例を経験したので報告する。
索引用語 肝細胞癌, 癌性リンパ管症