セッション情報 | 一般演題 |
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タイトル | 62:NSAIDs起因性出血性小腸潰瘍の一例 |
演者 | 藤崎 聡(天草郡市医師会立天草地域医療センター 内科) |
共同演者 | 天野 将之(天草郡市医師会立天草地域医療センター 内科), 那須 二郎(天草郡市医師会立天草地域医療センター 外科), 高田 登(天草郡市医師会立天草地域医療センター 外科), 前田 将臣(天草郡市医師会立天草地域医療センター 外科), 吉仲 一郎(天草郡市医師会立天草地域医療センター 外科), 原田 和則(天草郡市医師会立天草地域医療センター 外科) |
抄録 | 非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)が上部消化管に対して潰瘍やびらんなどを惹起することは以前から知られ,その病態については詳細な研究がなされている。一方,近年になりNSAIDsの有害事象として上部消化管と同様に下部消化管粘膜にも障害をおこすことが注目されてきている。今回われわれは,NSAIDs起因性出血性小腸潰瘍を経験したので報告する。症例は34歳,女性。主訴は下血。現病歴:2002年6月3日から腰痛に対してloxoprofen sodium 180mg/日を服用していた。同年6月20日頃から下腹部痛出現、6月27日には黒色便を認め近医受診,消化管出血を疑われ当センター紹介受診となる。入院時現症:顔面蒼白で眼瞼結膜に貧血があり,直腸診では暗赤色の便を認めた。血液検査では血色素は8.4g/dlと低下していた。以上の所見より下部消化管出血を疑い緊急大腸内視鏡検査(CF)を施行した。CFでは全大腸,特に右側大腸に血便を認めたが明らかな出血源は認めず,また上部消化管検索でも下血の原因となるような病変はなかった。さらに血管造影にて小腸からの出血を検索したが上腸間膜動脈領域に明らかな出血はなく,腹部CTでも小腸に腫瘍性病変はなかった。vital signは安定しており経過観察可能と判断し,入院のうえ内服薬を含めて絶飲食とし保存的治療を行った。入院第4病日に再度CFを施行し,回腸末端に略円形で打ち抜き状潰瘍を3ヶ認めた。顕出血はなく露出血管もなかったため経過観察とし,第14病日の3回目のCFで潰瘍は顕著な治癒傾向を認めた。本症例は下血発症前に2週間のNSAIDs服用歴があり,薬剤中止により速やかに潰瘍の治癒傾向が認められたこと,その他の腸疾患が否定的であることなどよりNSAIDs起因性出血性小腸潰瘍と診断した。NSAIDs起因性の小腸潰瘍は回盲部に多く認められ,打ち抜き状で略円形を呈するものが多い。NSAIDsの服用歴のある患者の下血の診断には上部消化管だけではなく,下部消化管とくに回盲部病変にも注意が必要である。 |
索引用語 | NSAIDs, 小腸潰瘍 |