セッション情報 一般演題

タイトル 166:

注腸X線検査において潰瘍性大腸炎との鑑別を要した閉塞性大腸炎の一例

演者 古賀 千晶(新日鉄八幡記念病院 内科)
共同演者 望月 祐一(新日鉄八幡記念病院 内科), 中島 穣(新日鉄八幡記念病院 内科), 梶原 英二(新日鉄八幡記念病院 内科), 佐渡島 省三(新日鉄八幡記念病院 内科), 折田 博之(同外科), 坂田 久信(同外科), 金城 満(同病理)
抄録 大腸癌などの大腸狭窄性病変の口側に発生する閉塞性大腸炎は、比較的まれな疾患とされている。今回我々は大腸癌の口側にカラーボタン様ニッシェの多発を認め、注腸X線上、潰瘍性大腸炎との鑑別を要した閉塞性大腸炎の1例を経験したので報告する。症例は72歳、男性。既往歴として過去に大腸疾患を指摘されたことはない。平成14年7月下旬より下痢と嘔吐が出現し8月3日、近医受診。同院にて腸閉塞と診断され、当院へ紹介入院となる。大腸内視鏡検査では下行結腸に全周性の進行大腸癌を認め、それより口側へのスコープの挿入は不能であった。注腸X線検査では、下行結腸下部に長さ7cmにわたりapple core signを認め、その口側約4cmから左側横行結腸にかけて管腔狭小化を伴う著明な地図状潰瘍をびまん性に認めた。潰瘍は縦走傾向で著明なカラーボタン様ニッシェの多発を伴っていた。以上の所見より、大腸癌とそれによる閉塞性大腸炎と診断のもと、8月12日に左半結腸切除術を行った。摘出標本では、Borrman2型の大腸癌とともに、その口側に壁肥厚を伴う広い潰瘍形成を認めた。両病変の間には長さ4cmにわたり浮腫状の正常大腸粘膜が介在していた。広範な潰瘍性病変の境界は明瞭で、粘膜面は大小の結節を伴いながら著明な地図状潰瘍や縦走潰瘍を形成していた。病理組織学的には、大腸癌はwell differentiated adenocarcinoma、深達度seで、潰瘍部の粘膜下層には著明な肉芽組織の形成と裂隙を多数認めた。この裂隙形成が注腸X線所見におけるカラーボタン様ニッシェに相当すると考えられたが、その頻度や程度は不明な点が多く文献的に考察を加え報告する。
索引用語 閉塞性大腸炎, 潰瘍性大腸炎