抄録 |
【症例】65歳,女性【主訴】便鮮血陽性精査【既往歴】20歳時虫垂切除術【現病歴】大腸癌検診にて便鮮血陽性を指摘されたため、6月当科初診。全大腸内視鏡検査(TCF)を施行し、上行結腸にφ8mmの陥凹を伴う隆起性病変を認めたため、精査加療目的で入院となった。【現症】 身長143.5cm,体重50.1kg, 血圧109/65, 胸部腹部に異常なし,腫瘤触知せず,表在リンパ節 触知せず【検査】Hb 12.7g/dl, Plt 24.7万, CEA 1.9ng/ml, CA19-9 16.2U/ml【経過】入院後のTCF再検時ではEUS器械の不良により色素内視鏡による詳細な観察のみとなり、IIa+IIcの形態で局面を形成した陥凹と病変の緊満感等により深達度sm massiveと診断した。生検にてGroup∨と診断され、病変においては腹部CTや注腸造影では内視鏡以外の情報は得られなかった。内視鏡的切除を断念し腹腔鏡補助下回盲部切除術を施行した。病理標本上well, SM2, ly1(mp), v1(sm) で大きさ・深達度の割に悪性度の高い病変であると思われた。表面陥凹型IIcを含む大腸癌は一般にわずか5mm~10mm程の大きさから、早期にsm以深への深部浸潤を始めると言われている。大きさから安易に完全生検を目的とした内視鏡的粘膜切除術を行い、断端部の深達度のみならずly,v因子などの病理組織診断が不十分となる場合がある。深達度や良悪性の診断にEUSや拡大内視鏡による検査は有用なことが多く今回も必要性を感じていたが、時に実際の病理診断との乖離がみられる症例に遭遇する。本病変は色素内視鏡所見からも悪性度を反映しているように思われたが、実際には追加治療や経過観察の判断に支障を来さないために、治療前の十分な検討が必要であると思われた。 |