セッション情報 一般演題

タイトル 47:

ステロイド投与により著明な自覚症状改善を示した自己免疫性膵炎の一例

演者 松尾 享(国立病院九州がんセンター 消化器内科)
共同演者 荒武 良総(国立病院九州がんセンター 消化器内科), 畠中 文香(国立病院九州がんセンター 消化器内科), 内村 浩太郎(国立病院九州がんセンター 消化器内科), 横田 昌樹(国立病院九州がんセンター 消化器内科), 澄井 俊彦(国立病院九州がんセンター 消化器内科), 井口 東郎(国立病院九州がんセンター 消化器内科), 船越 顕博(国立病院九州がんセンター 消化器内科)
抄録 症例は56歳女性。気管支喘息、慢性蕁麻疹で近医に通院していた。2002年4月上旬より食後の腹部不快感が出現し、腹部エコーで膵のびまん性の腫大を認め、精査加療目的で、5月23日、当院に紹介入院となった。血液検査では、胆道系酵素が軽度上昇、膵酵素はelastase-1,lipaseが軽度上昇していたが、他の膵酵素は正常範囲であった。免疫学的には、γ-グロブリン2.1g/dl、IgG 1880mg/dl、総IgG4 560mg/dl、RF 453IU/mlと高値を認めた。抗核抗体は陰性、腫瘍マーカーは全て正常範囲であった。セクレチンテストで4因子低下を認めた。HbA1cは7.5%と糖尿病を認めた。エコー、CTでは膵のびまん性腫大を認めた。ERPでは主膵管のびまん性不整狭細化像と、膵尾部での分枝膵管の拡張を認めた。以上より自己免疫性膵炎と診断し、6月5日からプレドニゾロン40mg/日より開始し、1週後に35mg/日に減量、その後は2週毎に漸減した。糖尿病は即効型インスリンの投与開始後、コントロール良好であった。ステロイド開始後、腹部症状は著明に軽減し、7月のエコー、CTでは膵は著明に縮小し、正常大となり、IgG値も正常化した。ただし8月中旬に、プレドニゾロン7.5mg/日へ減量後から、腹部症状が再燃し、再精査した。その結果、血液検査では、膵胆道系酵素は正常で、IgG 1372mg/dl、総IgG4 170mg/dl、RF 58IU/ml, HbA1c 5.8%と前回入院時より改善し、エコー、CTでは膵は腫大なく正常像であった。ERPでは、膵頭体部はほぼ正常像であったが、膵体尾部主膵管の不整狭細化像が残存していた。諸検査で他臓器の異常を認めなかったことより、ステロイド減量による自己免疫性膵炎の再燃と考え、9月21日からプレドニゾロン30mg/日に増量した。直後より腹部症状はほぼ消失した。一般的に自己免疫性膵炎の治療においては、プレドニゾロンは30-40mgから開始し、維持量は2.5mg-5mgとする報告が多いが、本症例はステロイド減量中、明らかなIgG上昇や、膵腫大の増悪を認めなかったものの、膵炎症状の再燃をきたし、ステロイド増量によって腹部症状の著明な軽減を示した。自己免疫性膵炎の治療について、多少の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 自己免疫性膵炎, ステロイド