セッション情報 一般演題

タイトル 89:

診断に苦慮した成人T細胞白血病による下痢症の一例

演者 増田 淳也(久留米大学 医学部 第二内科)
共同演者 鈴木 飛鳥(久留米大学 医学部 第二内科), 富安 信夫(久留米大学 医学部 第二内科), 高木 孝輔(久留米大学 医学部 第二内科), 光山 慶一(久留米大学 医学部 第二内科), 豊永 純(久留米大学 医学部 第二内科), 佐田 通夫(久留米大学 医学部 第二内科)
抄録 【症例】55歳、男性。主訴は水様性の下痢。H12年3月頃より軟便を認めるようになり、次第に悪化。H13年5月頃より1日3~4回の水様性下痢となったため、同年10月当科を受診。下部消化管内視鏡検査にて直腸から回盲部にかけて全周性連続性にびまん性の発赤粘膜を認め、生検組織にて好中球、形質細胞を含む炎症細胞の浸潤を認めたため、潰瘍性大腸炎と診断した。5ASA 2250mgで治療を開始したが、症状の改善なく水様性下痢は悪化した。内視鏡所見の活動性に比較して下痢症状がかなり強いことより精査加療目的に入院となった。その後の検査では便培養陰性、寄生虫検査も陰性であり便中脂肪染色も陰性であった。また、生検組織のコンゴレッド染色も陰性であった。入院後ステロイド剤投与で、一時的に症状軽快したが、再度下痢症状増悪した。HTLV-1陽性であり、末梢血中にATL様細胞を認めていたが、体表、体内のリンパ節腫大を認めず、リンパ球数、カルシウム、LDHの上昇なく、末梢血のATL様細胞数も5%以下であったためATLくすぶり型と診断されていた。上部下部内視鏡、CT、小腸造影でも腫瘤性病変は認めていなかったが、内視鏡的に胃粘膜及び大腸粘膜にびまん性に発赤所見を呈すること、ステロイドに抵抗性であったことより潰瘍性大腸炎よりもむしろ、ATLの消化管浸潤を疑い胃、大腸粘膜生検を行った。生検組織に異型リンパ球の浸潤を多数認め、CD3、CD4陽性で、CD8、CD20、TIA-1は陰性であった。このことからATLの消化管浸潤と診断した。ATLに対しTCOP療法2クール施行したところ下痢症状消失し9月14日退院となった。
【目的】腫瘤を形成しないATLの消化管病変がATLくすぶり型で出現することはまれで、難治性下痢症の診断に苦慮した1例として若干の考察を加え報告する。
索引用語 成人T細胞白血病, 難治性下痢症