セッション情報 一般演題

タイトル 129:

広範な腸管潰瘍を有し治療に難渋した単純性潰瘍の1例

演者 田邉 寛(福岡大学 筑紫病院 消化器科)
共同演者 村上 右児(福岡大学 筑紫病院 消化器科), 櫻井 俊弘(福岡大学 筑紫病院 消化器科), 佐藤 茂(福岡大学 筑紫病院 消化器科), 八尾 建史(福岡大学 筑紫病院 消化器科), 松井 敏幸(福岡大学 筑紫病院 消化器科), 八尾 恒良(福岡大学 筑紫病院 消化器科), 原岡 誠司(福岡大学 筑紫病院 病理部), 岩下 明徳(福岡大学 筑紫病院 病理部)
抄録 症例は28歳男性。2000年7月頃より腹痛、腹部膨満感、下痢が出現。近医を受診し、内視鏡検査にて回盲部に地図状潰瘍を認めたが確定診断には至らなかった。難治であったため2001年6月回盲部切除を施行。切除標本では肉眼的に4.5×3.0cmの単発性潰瘍を認め、病理組織学的にUl-IVであり総合的に単純性潰瘍と診断された。術後の経過は良好であったが同年11月、腹痛、下痢、39℃発熱およびCRP強陽性、赤沈亢進等高度の炎症反応、また吻合部に潰瘍の再発を認め、精査目的にて2002年2月当院紹介され入院となった。入院時の消化管のX線検査では吻合部口側回腸に1.5~3.0cmの下掘れ傾向の強い打ち抜き様潰瘍を5ヶ所認め、単純性潰瘍に矛盾しない所見だった。大腸は吻合部から横行結腸中央部まで広範囲に下掘れ傾向の強い帯状の不整形潰瘍と炎症性ポリープが連なっていた。生検標本では潰瘍の所見以外肉芽腫等特異的な所見を認めず、単純性潰瘍もしくはBechet病が疑われたが眼症状、皮膚症状、外陰部潰瘍は認めずBechet病の診断基準は満たさなかったため単純性潰瘍と診断した。TPNにて治療開始したが、経過中口腔内アフタ性潰瘍が出現。プレドニン50mgを併用するも口腔内アフタ性潰瘍は完全消失せず、吻合部口側回腸、横行結腸の潰瘍は改善傾向にあるも治療効果は不十分であった。また、この頃より直腸にmucosal bridgeを伴う単発性の下掘れの潰瘍を認めた。ステロネマ注腸と共に白血球除去療法を計5回(1回/週)施行した。以後の経過は良好であり回腸、大腸の潰瘍は瘢痕化し、また直腸の潰瘍も改善を認めた。単純性潰瘍の好発部位は回盲部とされているが自験例は、直腸を含め広範囲に病変を認めた単純性潰瘍と考えられた。
索引用語 単純性潰瘍, 直腸潰瘍