抄録 |
【はじめに】胆管癌症例において、長期生存が期待出来る治療は外科的R0切除のみであるが、現実には切除不能症例や切除したものの癌の遺残を来してしまう症例が数多く存在する。【目的】当科における胆管癌非切除症例の予後を検討する。【対象】当科における胆管癌非切除症例165例、胆管癌切除症例375例(CurA, B, Cはそれぞれ143、110, 122例)。胆嚢癌、肝内胆管癌、乳頭部癌は対象外とした。【結果】非切除症例のうち、対症療法のみで終った58例の予後(MST 5.4ヶ月)は、何らかの癌治療を行なった群(MST 18.8ヶ月)に比べて有意に不良であった(p<0.0001)。癌治療の内訳は体外照射が59例(EBRT群)、腔内照射が36例(RALS群)、全身化学療法が103例(chemo群)であった(重複含む)。chemoの有無(p<0.0001)とEBRTの有無(p=0.0004)でそれぞれの予後に有意差を認めたがRALSの有無では予後に差を認めなかった。非切除症例全体のMSTは15.4ヶ月でCurC症例(MST 26.0ヶ月)よりも有意に予後不良であった(p<0.0001)。また、CurC症例は、RALS群(p=0.0160)、chemo群(p=0.0203)に比べて予後は良好であったが、EBRT群(p=0.0693)との間には有意差は認めなかった。ただし、非切除症例は切除症例よりも明らかに進行した症例が多く、fStage4a, 4bのCurC症例(n=85)に限定して比較すると、非切除群全体との間に有意差は認めるものの(p=0.0160)、RALS群、EBT群、chemo群のいずれとの間にも有意差は認められなかった。化学療法単独(C)群と、放射線化学療法(CR)群の間では、2年目までの落ち込みがCR群で少ない傾向にあるが、有意差は認められなかった(p=0.2041)。【まとめ】Stage4以上の進行胆管癌症例においては、何らかの癌治療を行うことが可能であった非切除症例と、切除したもののCurCに終った症例の間に予後の差は認めない。術前からR0切除が困難と予想される高度進行胆管癌症例には外科的切除よりは、全身化学療法と場合によっては体外照射などの治療を組み合わせて行なうことが患者への侵襲を考えれば望ましいと考えられる。 |