セッション情報 一般演題

タイトル 27:

吐血を契機に発見された胃MALTリンパ腫の一例

演者 池田 幸紀(北九州市立八幡病院)
共同演者 船津 史郎(北九州市立八幡病院), 早田 正典(北九州市立八幡病院)
抄録 【症例】19才,女性.【現病歴】前日よりタール便を認め,吐血,ふらつきなどをも加わったため当科受診となった.【既往歴】特記事項なし.【来院時現症】眼瞼結膜の貧血以外,特記すべき所見なし.【経過】病歴,採血結果より上部消化管出血が疑われるため,即日緊急内視鏡を施行したところ胃内に多量の凝血塊を認めた.胃体中部小彎前壁寄りには早期胃癌IIc様の病変あり,同部は露出血管からの噴出性の出血を伴っていた.さらに胃体下部小彎後壁にも露出血管を伴う線状の潰瘍認めたが,出血は軽度であった.それぞれに対しエタノール注入,クリッピングによる止血処置を施行した.後日の内視鏡では上記2病変の止血の確認に加え,前庭部大彎に境界不明瞭な褪色調の陥凹性病変を認めた.PPIの投与により潰瘍は改善傾向にあったが,それぞれより生検を行ったところ,胃体中部小彎前壁寄りおよび前庭部大彎の病変からMALTリンパ腫の診断を得た.またラピッドウレアーゼテストおよび血清IgG抗体よりHelicobacter pylori陽性を確認した.超音波内視鏡では,前庭部の病変は粘膜下層深部にまで及んでいたが,全身のCTおよびGaシンチグラムでは胃外に病変を認めておらず,現在H. pyloriの除菌療法にて経過観察中である.吐血を契機に発見される胃MALTリンパ腫は比較的稀であるが,消化管における緊急疾患の一つとして鑑別を考慮すべきであると思われた.また,その治療法に関する指針は確立していない状態であり,今後も厳重な経過観察が必要であると考えられる.
索引用語 吐血, 胃MALTリンパ腫