抄録 |
化膿性門脈炎の1例【症例】53歳、男性。生来著患なし。熱発および右側腹部痛を訴え近医より紹介受診。来院時、体温38.5℃、右側腹部に筋性防御を伴う自発痛、圧痛を認めた。血液検査では白血球19510、CRP29.7と著明な炎症所見を認め、さらに胆道系酵素の上昇を認めた。腹部超音波検査では肝S5に36X18mmの不整形な低エコー領域を認め、肝内門脈内腔に沿って充実性エコーが充満しドップラー検査では門脈血流の消失が確認された。造影CTでは、肝実質の不均一な造影パターンを示し上腸管膜静脈本幹から門脈右枝が描出されず、広範な門脈内血栓形成が疑われた。また上行結腸に限局性腸管浮腫像を認め大腸憩室炎の存在が疑われた。【入院後経過】肝S5低エコー領域を超音波ガイド下に穿刺したところ血液が吸引され、さらに造影にて虫食い像を伴う肝右葉門脈造影が得られた。これらの結果から上行結腸憩室炎およびこれに続発した化膿性門脈炎と診断し、抗生物質投与による抗菌療法を開始した。これにより第4病日には腹痛は消失し36℃台に解熱、さらに炎症所見も軽快した。注腸透視では上行結腸に多発性大腸憩室を認め、第29病日に施行した大腸カメラ検査では右側結腸の多発性大腸憩室を認めるのみで炎症所見は軽快しており第36病日退院となった。また発症後約2ヶ月後の腹部超音波検査では、肝内門脈内充実性エコーは消失し血流の再開像が認められた。【考察】化膿性門脈炎は稀な疾患であり、多くの場合腹腔内炎症性疾患に続発し、その治療は原発巣の処置および強力な抗菌療法である。本症例の場合、おそらく大腸憩室炎に続発した化膿性門脈炎、腹部敗血症と考えられる。画像所見を中心とし、若干の文献的考察を加え報告する。 |