セッション情報 一般演題

タイトル 274:

スキルス胃癌術後、直腸に血行性転移を来した1症例

演者 明石 道昭(多久市立病院 外科)
共同演者 薬師寺 浩之(多久市立病院 外科), 原田 貞美(多久市立病院 外科)
抄録 スキルス胃癌術後、直腸に血行性転移を来したと思われる症例を経験したので報告する。症例は66歳、男性。既往歴:完全右脚ブロック、家族歴:母親が胃癌・子宮癌・肺癌、姉と弟が胃癌。現病歴:平成11年3月5日、胃癌に対し胃全摘術および2群リンパ節郭清を施行。組織型は低分化型腺癌(por 2)、stage II、根治度B。術後化学療法としてMTX-FU交代療法、UFT経口投与を行った。平成14年5月頃、直腸狭窄症状が出現したため6月24日入院。直腸診では肛門輪より3 cmから全周性の狭窄があり、直腸鏡では粘膜面は正常に保たれ、注腸造影検査ではRbで直腸が全周性に硬く狭窄していた。直腸粘膜下組織生検で一部にsignet ring cellを含むscirrhous patternの癌組織像が認められた。胃癌組織と比較したところ類似する組織像であり転移が疑われた。7月1日 S状結腸人工肛門造設術施行後、reduction surgeryを目的とし7月19日腹会陰式直腸切断術を施行。腫瘍はRbに存在し、肉眼的に腹膜播種性転移は認めず、腹腔細胞診にても腫瘍細胞は存在しなかった(Class II)。病理組織診断では、直腸粘膜には腫瘍細胞は存在せず、粘膜下層から外膜にかけ、孤在性にsignet ring cellを含む異型細胞が存在していた(por 2)。腫瘍細胞は筋板周囲また筋層間を浸潤性に発育しており、スキルス胃癌の組織像に類似していた。直腸原発の低分化型腺癌は全直腸癌中2.4~3.5%と非常に稀である。胃癌術後3年を経過し初回転移再発している点に疑問は残るものの、本症例は両癌の類似した病理組織像から原発性スキルス胃癌が血行性に直腸粘膜下に転移した転移性直腸癌と判断した。以上、若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 転移性直腸癌, スキルス