セッション情報 ワークショップ1

タイトル W-005:

早期胃癌に対する縮小治療の適応と実際

演者 平井 郁仁(福岡大学筑紫病院 消化器科)
共同演者 菊池 陽介(福岡大学筑紫病院 消化器科), 松井 敏幸(福岡大学筑紫病院 消化器科)
抄録 【背景と目的】近年,早期胃癌に対して腹腔鏡手術や内視鏡的粘膜切除術(以下,EMR)など縮小治療がさかんに行われている. ITナイフの登場で一括でより大きな切除が可能となり,病変サイズの面での適応は拡大しつつあるが,その普及は十分ではないのが現状である.当科では胃癌学会のガイドラインに則りEMRの絶対適応を20 mm以下でul(-)の分化型粘膜内癌としてきた.腹腔鏡下胃局所切除術(以下,LWR)はEMRの絶対適応外でn(-)と思われる場合の治療の選択肢として行ってきた.今回, strip biopsy法を中心に施行したEMRとLWRさらに最近当科でも導入したITナイフによるEMRの対象病変の解析と術後経過を検討した.【方法】1994年から2000年までの7年間で当院ならびに関連施設でEMRを施行した114症例,120病変(絶対適応のみ)とLWRを施行した21症例,21病変を対象とした.ITナイフは9症例,9病変に対して施行した.各群間における病変のsize,肉眼型,部位,組織型,深達度および追加治療,再発の有無を検討した.【成績】病変sizeはLWR群12.5±6.8mmでEMR群の10.2±4.5mmと比べ有意に大きかった(P<0.05).ITナイフ群は11.9±7.3mmで有意差はなかった.肉眼型ではLWR群で陥凹型が多く(P<0.01),ulを合併した病変が4例あった.組織型はLWR群がwell:17,por:4病変と他群よりporが多かった(P<0.05).深達度はLWR群でsm2,3が2病変あり,他群に比しsm2,3癌が多かった(P<0.05)。追加治療はEMR群は不完全切除47病変のうち,深達度がsmの 2病変に外科的切除,他45病変に内視鏡的治療を行った. LWR群では深達度sm2,3の2病変に幽門側部分切除術を施行した.現在のところいずれの群でも胃癌死はない.【結論】LWRはul合併、porなどEMRの絶対適応外の病変に行われており,その治療成績は良好であった.縮小治療は根治度と技術的な習熟によりその適応は相対的に変わりうるものと思われる.今回は従来法との明らかな差は見いだせなかったが、ITナイフによるEMRも施行例の蓄積とともに適応の拡大が期待される.検討症例には深達度sm2,3や再発をきたしたものもみられたが適切な追加治療がなされており,予後は良好であった.
索引用語 早期胃癌, 縮小治療