セッション情報 一般演題

タイトル 267:

先端細径透明フード、ヒアルロン酸ナトリウムを併用した大腸隆起性病変に対するEMRの経験~ITナイフ法との比較

演者 井上  恵(山香町立国保総合病院)
共同演者 西村 誠(山香町立国保総合病院), 姫野 克郎(山香町立国保総合病院), 柴山 均(山香町立国保総合病院)
抄録 【緒言】近年、EMRに関するさまざまな技術の向上により、EMRの適応が拡大されつつあるが、技術的困難な理由による分割切除後の遺残再発が問題となっている。大腸腫瘍においても、一括で安全に施行しうる安全なEMR法の確立が必要となってきている。最近開発されたITナイフ法は、大きさに関する適応拡大に貢献したが、盲目的剥離の時間が長く、出血や高い穿孔率が問題と言われている。近年、ヒアルロン酸Naの局注を行い、病変を十分隆起した上で先端細径透明フードを装着し、ニードルナイフにより剥離を行う、山本ら(自治医大)の方法(EMRSH)が注目されている。今回我々は上行結腸の病変に対し、同法によるEMRを経験したので、自験例と文献的考察を加え報告する。【症例】84歳女性。便鮮血陽性に対する精査の結果、上行結腸に径20mm大の易出血性のIIa様病変を認めた。同部位のbiopsyの結果、病理診断はGroup4で、EMR目的で8月16日当科入院となった。【方法】9月4日EMRを施行。凝固装置としてErbe社のICC2000を用いた。病変周囲をマーキングし、エピネフリン加0.5%ヒアルロン酸Na溶液を局注。病変部の十分な隆起を得た後、ニードルナイフで全周切開を加えた。その後、内視鏡先端に先端細径透明フードを装着し、病変の下に潜り込むようにしてニードルナイフで粘膜下層を剥離。血管は可及的にAPCモードで凝固し、合併症なく一括切除可能であった。病理の結果はtubular adenomaで垂直断端・水平断端ともに(-)であった。【結語】ヒアルロン酸Naは、1)粘膜隆起が長時間持続し、2)50%グルコースなどと比較しても(浸透圧が等張なため)組織傷害が少なく、3)エピネフリン添加により出血も少ない、という特性を持つ。また、先端細径透明フードを用いることにより、剥離部位を実際に確認しながら処理でき、穿孔を防ぐことが出来る。出血に関しても、血管を凝固後に切開することで、不要な出血を減らすことができる。当法は今後、胃・大腸の大病変のEMRにおいて、非常に有用であると思われる。
索引用語 EMR, ヒアルロン酸ナトリウム