抄録 |
【緒言】肝門部胆管癌に対する治療は,切除が第1選択であるが,局所過進行/残肝容積不足が要因で切除不能とされる症例も少なくない.切除不能例に対する治療として, Gemcitabine(GEM)等の新規抗癌剤が登場し,治療成績が向上してきているが,長期生存や根治を得ることは未だに困難である.当院では,局所過進行による切除不能例での,(1)長期生存や根治を得ること,(2)切除可能例へのConversionを目的として,化学放射線療法(CRT)を導入してきた.【目的】切除不能肝門部胆管癌に対するCRTの有用性について検討する.【対象/方法】2002-2010年にCRTを施行した切除不能肝門部胆管癌37例(平均65.1歳)を対象とし,CRTのfeasibility/合併症/遠隔成績を検討した.CRTは3次元原体照射(40-72Gy)にFu剤 (単独/+CDDP[FP])またはGEMを併用した.【結果】(1)CRT完遂率は97.3%(36/37)で,脱落した1例は感染(胆管炎)制御不良で照射を中止した.(2)早期副作用は,5例(13.5%)に認められたが,うち3例はGEMに起因すると思われる間質性肺炎(2例)と腎機能障害(1例)であり,照射に起因すると思われたのは,食欲不振/放射線性胃炎(各1例)であった.(3)晩期副作用は,2例で消化管出血による入院加療(輸血)を要した.(4)全例の1/3/5年生存率=68.8/23.2/11.6%,MST=18.2(月)であり,長期生存(≧5年)を2例(各々70/72Gy+FP療法)認めた.(5)併用薬剤別のMSTはFu単独/FP/GEM=7.2/16.8/20.5(月)で,FPもしくはGEM併用例が予後良好の傾向であった.(6)37例中1例でCRT(60Gy+GEM)とその後の全身化療期間中に残肝容積の増加が得られ,根治切除にconversionし得た.【考察】今回のシリーズは局所過進行例が中心ではあるものの,18.2ヶ月のMSTを得ており,GEM+CDDPを用いた切除不能胆道癌に対する全身化学療法(11.7ヶ月)(ABC-02試験)に比し遜色ない成績であると思われた.【結語】肝門部胆管癌に対する3次元原体照射は比較的安全に完遂可能で,化学療法と組み合わせることで,予後の改善に寄与する可能性が示唆された. |