セッション情報 一般演題

タイトル 203:

AFP上昇を認めた肝転移を伴った膵頭部膵島細胞癌の一切除例

演者 森久 陽一郎(国立病院九州医療センター 肝臓病センター)
共同演者 高見 裕子(国立病院九州医療センター 肝臓病センター), 才津 秀樹(国立病院九州医療センター 肝臓病センター), 福森 一太(国立病院九州医療センター 肝臓病センター), 福泉 公仁隆(国立病院九州医療センター 肝臓病センター), 釈迦堂 敏(国立病院九州医療センター 肝臓病センター), 酒井 浩徳(国立病院九州医療センター 肝臓病センター), 安森 弘太郎(国立病院九州医療センター 放射線科), 村中 光(国立病院九州医療センター 放射線科), 渡辺 次郎(国立病院九州医療センター 病理), 竹下 盛重(国立病院九州医療センター 病理)
抄録 肝転移を伴い、またα-fetoprotein (AFP) の上昇を認めたために、術前に肝癌と膵癌の重複癌の可能性を否定することが困難であった非機能性膵島細胞癌を経験したので報告する。 【症 例】62才、男性。 【原病歴】平成14年4月検診にて胃前底部に早期胃癌が発見され、その治療(EMR)目的で他院に入院した際の検索にて膵頭部及び肝内に腫瘍性病変を認めた。なお、前医での肝腫瘍針生検の結果は肝細胞癌との診断であった。当科に転院後の血液生化学検査ではアミラーゼ、空腹時血糖を含めて異常はないものの、AFPは 257.4ng/l(L3分画77.1%)と上昇。またCEA、CA19-9、DUPAN-2、SPAN-1,エラスターゼ1はいずれも正常。腹部超音波検査では膵鉤部に32×25mmの内部に比較的明瞭に血流を伴う腫瘍を認め、また肝外側区域に38×30mm、肝内側区域に15×10mmのやや高エコーの腫瘤が認められた。膵及び肝腫瘍はいずれもMRIではT1で低信号、T2で高信号であり、肝腫瘍は周辺を中心に早期に造影された。膵腫瘍はエコーでは血流が明瞭であったものの、MRIおよびCTでの造影効果は乏しかった。前医ERCPに膵鉤部膵管の狭窄を認めたが、主膵管に狭窄、拡張、蛇行等の異常所見は認めなかった。以上より膵頭部癌と肝癌の重複癌との診断にて6月26日、膵頭十二指腸切除及び肝左葉切除を施行した。病理組織診断は膵島細胞癌及びその肝転移であった。術後の経過は順調で、現在再発は認めていない。 【考 察】膵島細胞癌が非機能性であり、かつAFPが高値を示して肝転移を認めたために、術前の診断が困難であった。病理検査にて重複癌との診断は否定されたが、膵島細胞癌は発育速度が緩慢であり、肝転移を伴っても、可能であれば切除術を施行するのが最良の治療法であるとされ、結果的に当症例に於いても治療法の選択は正しかったと考える。今回の症例を画像、病理診断に重点を置いて報告すると共に、肝転移を伴う膵島細胞癌について文献的考察を加えて発表する。
索引用語 膵島細胞癌, 高AFP血症