セッション情報 一般演題

タイトル 229:

進行胃癌、閉塞性黄疸に併発した胃蜂窩織炎の一例

演者 柏木 陽一郎(筑豊労災病院 内科)
共同演者 宮嶋 靖士(筑豊労災病院 内科), 荒木 英俊(筑豊労災病院 内科), 福間 道雄(筑豊労災病院 内科), 田中 英二(同 外科), 岡部 正之(同 外科)
抄録 症例は70歳女性、糖尿病にて近医に通院していた。平成13年11月7日頃より発熱、嘔吐、上腹部痛が出現し、11月14日同医を受診したところ、血液検査にて肝胆道系酵素の上昇を認めたため同日当院紹介受診した。WBC 12400/μl、CRP 9.45mg/dlと炎症所見あり、 A LP 2299IU/l、γ- GTP 617IU/l、T.Bil 1.87mg/dl、と胆道系酵素の上昇及び、腹部エコーにて肝内胆管の拡張所見も認めたため、閉塞性黄疸に伴う胆道感染症の診断にて入院加療とした。入院後、絶食、抗生剤投与していたが、経過中貧血の進行及び吐血が出現したため上部消化管内視鏡検査を施行したところ、胃角部から体中部前壁中心のBorrmann 3型胃癌 (病理組織診 poorly differentiated adenocarcinoma)と胃噴門部に2つのやや白色調で粘膜下腫瘍様の隆起を認めた。隆起は非常に柔らかく、鉗子による圧迫で白色膿様物の流出を認め、その膿様物の培養にて緑膿菌と大腸菌が検出された。また、腹部 CT上胃壁の肥厚と胃壁内の低吸収域の所見もあることから、本症例は進行胃癌、閉塞性黄疸に併発した胃蜂窩織炎と診断した。画像上胃癌の胃十二指腸間膜浸潤による閉塞性黄疸と考えられ、低栄養等全身状態不良もあるため保存的治療の方針とした。以後、閉塞性黄疸増悪にてPTCD施行するも全身状態改善せず、入院第42病日に死亡退院された。胃蜂窩織炎の起因菌はα- Streptococcusが約70%を占めるとされており、本症例のように緑膿菌と大腸菌に起因するものは稀である。本症例では閉塞性黄疸に併発していることから胆道感染からの血行性感染と、進行胃癌に由来する胃液酸度低下や栄養状態不良が誘因となったものと考えられた。
索引用語 胃蜂窩織炎, 閉塞性黄疸