セッション情報 一般演題

タイトル 221:

興味ある経過を呈した膵石症に合併した膵癌の一例

演者 山川 正規(長崎市立市民病院内科)
共同演者 山尾 拓史(長崎市立市民病院内科), 小原 則博(長崎市立市民病院外科), 宇賀 達也(長崎市立市民病院外科), 河合 紀生子(長崎市立市民病院病理)
抄録 症例は70歳、男性。慢性膵炎、膵石症、糖尿病で昭和61年から当院に通院中であった。CA19-9高値のため、平成12年10月10日、腹部CT(造影)検査施行。主膵管は著明に拡張し、膵頭部は腫大、石灰化を伴っていたが腫瘍性病変は指摘できず、腹部MRI検査では、膵頭部に膵石が充満し、取り囲むように不整に造影される部分がみられた。ERCP検査では、主膵管は頭部のみしか造影されなかった。画像上、膵癌を否定できず手術を勧めたが、拒否されたため経過観察とした。平成13年4月頃より、胆管炎などで入退院を繰り返すようになった。CA19-9もさらに上昇しており、再度手術を勧めたが拒否。平成14年3月19日、心窩部痛のため、当院受診。腹部CT検査で膵頭部の結石は消失し、同部位は壁が不整に染まる嚢胞性の変化を認めた。ERCP検査では、ファーター乳頭部のすぐ肛側に発赤を伴った瘻孔様所見が認められた。膵頭部膵管は不整に拡張しており、末梢まで主膵管は著明に拡張していた。血管造影検査では、胃十二指腸動脈のencasement、膵内分枝の圧排・伸展・微細な血管増生・脾静脈の閉塞を認めた。CA19-9は726U/mlまで上昇していた。手術の了承が得られたため、5月14日手術(膵頭十二指腸切除術+横行結腸部分切除)を施行した。病理組織学的検査では、膵頭部中心に膵体部にかけて、invasive ductal carcinoma, tubular adenocarcinoma , moderately differentiatedの診断で、十二指腸粘膜にも浸潤し、ファーター乳頭部の肛側に瘻孔が形成されており、結石は同部位から排出されたものと考えられた。術後、CA19-9は23U/mlと正常化した。以上、膵石、慢性膵炎の経過中に膵癌を合併し、膵石が排出された興味ある症例を経験したので報告する。
索引用語 膵石症, 膵癌