セッション情報 シンポジウム14(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化吸収学会合同)

機能性消化管障害の病態と治療

タイトル 消S14-14:

ストレス関連ペプチドの消化管機能抑制について ―脳-腸相関の観点から―

演者 大野 志乃(埼玉医大総合医療センター・消化器・肝臓内科)
共同演者 魯 昭輝(帝京大ちば総合医療センター・共同研究室), 屋嘉比 康治(埼玉医大総合医療センター・消化器・肝臓内科)
抄録 【目的】機能性ディスペプシア(FD)の病態として胃適応性弛緩や排出能などの運動機能低下や早期飽満感による食欲低下などが報告されている。これまでFDの病態には心理的ストレスの関与が示唆されているが、演者らはFDの病態を明らかにするためにストレス関連ペプチドCRFの受容体アゴニストであるウロコルチン1(UCN1)をラット脳室内投与(ICV)して、胃酸分泌と胃運動能、食欲の変化とグレリンの動態への影響について検討し、さらに受容体subtypeについて検討した。また、中枢神経における伝達機序についても検討した。【方法】SDラットにUCN1 5μg/10μlを脳室内投与し、胃酸分泌、摂餌量、血中グレリン濃度、胃粘膜グレリンおよびそのmRNAを測定した。さらにCRF受容体subtypeの選択的antagonistを投与してUCN1による食欲低下への影響について検討した。また、中枢神経の伝達機序についてはc-fos mRNA発現およびc-fos蛋白発現について検討した。【成績】UCN1の脳室内投与にてラットの胃酸分泌や胃排出能の抑制、摂餌量、血中グレリン濃度、胃粘膜中のプレプログレリンmRNAの低下が認められた。astrresin2-B投与にてUCN1の胃酸分泌や胃排出能の抑制、食欲低下作用やグレリン血中濃度とプレプログレリンmRNA合成低下は抑制された。中枢神経においてはUCN1 ICVにて視床下部室傍核、青斑核、延髄孤束核および腹外側核などにてc-fos mRNAないしc-fos蛋白発現が認められた。【結論】UCN1の脳内投与はCRF受容体2を介して胃酸分泌の抑制、胃排出能の抑制、胃粘膜内グレリン産生・分泌を減少させ食欲を低下させること、さらに脳内交感神経核中枢の活性化が認められており, その機序においてストレス時の交感神経興奮がFD症状発現に関与していることを示唆するものと思われる
索引用語 機能性ディスペプシア, ウロコルチン