抄録 |
症例は71歳、女性。 主訴 黄疸、腹部膨満感。 55歳時B型肝炎指摘。’97年2月より ’00. 11月までS4とS7-8肝癌(径2.0cm)に対し肝動脈化学療法(TAI)と経皮的エタノール注入療法(PEIT)を計4回施行。 ’00.12月 中等度腹水出現し、’01.1.22 GOT 119 IU/l, GPT 95 IU/l, Alb 2.9 g/dl, TB 1.5 mg/dl, PT 56 %, HbeAg 18.5 index, HBeAb 15.1 %, HBV-DNA 7.9 LGE/mlでゼフィックス100mg 投与開始。その後肝機能改善し、腹水消失し全身状態良好であった。’02.4.19 GOT 204 IU/l, GPT 162 IU/l, HBV-DNA 7.6<logコピー/ml(YIDD)で、SNMC 60ml投与開始。 6.7より黄疸出現、倦怠感増強し、6.17入院。 入院時腹部に軽度腹水あり。PT 32.0 %, Alb 2.7 g/dl, T.Bil 6.7 mg/dl, D.Bil 4.4 mg/dl, GOT 262 U/l, GPT 188 IU/l, LDH 1506 IU/l, HBeAg 2.1 Index, HBeAb 37.0 %, HBV-DNA 7.6<logコピー/ml。入院時よりSNMC100mlとIFNα2b3MU投与するも肝不全進行し、7.4死亡。 剖検では肝は重量565gの著明に萎縮した壊死後性肝硬変で偽小葉内肝細胞に変性、壊死所見が散見された。S7-8とS4の肝細胞癌治療部はすべて凝固壊死所見で残存肝細胞癌は認めなかった。非代償性肝硬変にラミブジンを投与し、肝予備能が改善し、予後が延長される例が散見される。本症例でもラミブジン投与1年間は肝機能改善し全身状態は良好となったが、13か月後にウイルス再上昇し、さらにその2か月後に血清トランスアミナーゼ上昇し急速に肝不全に進展した。本症例のように著明に萎縮した非代償性肝硬変症例ではYMDD変異株により急速に肝不全になる可能性があるため、ラミブジン投与には対象を十分に検討し慎重に投与すべきであると考えられた。 |