セッション情報 一般演題

タイトル 287:

右葉萎縮を伴った先天性肝線維症の一例

演者 蒲生 美恵子(北九州市立医療センター 内科)
共同演者 上野 新子(北九州市立医療センター 内科), 森田 千絵(北九州市立医療センター 内科), 井原 隆昭(北九州市立医療センター 外科), 丸山 俊博(北九州市立医療センター 内科)
抄録 【症例】71歳、女性。【主訴】肝障害。
【現病歴】平成6年頃から肝障害にて近医に通院していた。肝炎ウイルスマーカー陰性、飲酒歴、薬剤使用歴がなく、原因不明であり、精査をすすめられて平成9年8月当院を紹介され、同11年11月10日肝生検目的で入院した。
【家族歴・生活歴・既往歴】飲酒歴、薬剤の使用なし。その他特記事項なし。
【検査所見】末梢血:WBC 4,200/cmm, RBC 442×104/cmm, Hb 12.9 g/dl, Plt 10.0×104/cmm. 血液生化学:総蛋白 7.3 g/dl, アルブミン 4.2 g/dl, 総ビリルビン 0.7, Glu 92, T.Chol 196 mg/dl. AST 83, ALT 59, LDH 238, ALP 748, γGTP 283 IU/l. 総胆汁酸 22.0 mg/dl. (-), IgG 1,850, IgA 458, IgM 68.8 mg/dl. 血清学:HBsAg (-), HbcAb (-), HCV-Ab (-). ANA 160倍, LKM1 (-), ASMA (-), AMA (-), AMA-M2 (-). 超音波検査・CT:肝は右葉が検出できず、左葉は腫大、内部は粗造で、軽度の脾腫を認め、肝腎に多発性の小嚢胞を認めた。肝生検:門脈域の線維化および小葉間胆管の増生を認め、化膿性炎症を伴う胆管過誤腫の所見。
【経過】血液検査で胆管系酵素上昇が強く、他に肝障害の原因がないため、AMA陰性PBCが疑われた。針生検では化膿性炎症をともなった胆管過誤腫の所見であった。過誤腫は先天性肝線維症にともなう事が知られているが、肝病変の診断が未確定のまま経過を観察した。平成14年6月回盲部結腸癌が発見され手術を行ない、術中に楔状肝生検を施行した。その結果先天性肝線維症の診断を得た。
【考察】診断に苦慮した、右葉委縮を伴った先天性肝線維症の1例を経験した。先天性肝線維症は若年にて、門脈圧亢進症や胆管炎症状にて発症し診断されることが多いが、本例は自覚症状がなく、高齢にて診断に至った希な症例である。本症例について画像所見、病理所見、術中のマクロ所見を提示し、文献的考察を加え報告する。
索引用語 先天性肝線維症, 右葉萎縮