抄録 |
総胆管に狭窄・閉塞をきたす疾患は,殆どが胆管癌であるが,稀にsclerosing cholangitis・adenoma・adenomyoma・papilloma・granuloma・apudoma・leiomyomaなどの報告がある。今回我々は,原因不明で下部胆管に狭窄をきたした症例を経験した。症例は55歳,男性。H14年5月28日歯科治療後より頸部リンパ節腫脹と発熱を認めたため近医受診したところ,血液検査にて肝機能異常を指摘された。ERCPにて下部胆管に狭窄を認めたため,加療目的で6月19日当科紹介・入院となった。入院後より黄疸が出現し,6月13日には0.69mg/dlであったT-bilが,同月21日には5.39mg/dlとなったため,PTGBDを施行したところ,下部胆管に全周性の高度狭窄と上流胆管の軽度拡張を認めた。血清中CEA 6.3ng/ml・CA19-9 13IU/ml・胆汁中CEA 0.87ng/ml・CA19-9 12U/ml・胆汁cytology陰性であったが,画像所見より下部胆管癌と診断し,7月1日手術を施行した。術中所見にて,下部胆管に硬い棍棒状のmassを触知した。切離した上部胆管にも全周性の硬化・肥厚を認めたが,迅速病理診断にて癌浸潤は否定された。No.12cに硬く腫大したリンパ節を認めたが,迅速病理診断にて転移は否定された。術前にPpPDを予定していたが,No.5・6のリンパ節も軽度腫大しており,術式はPDに変更した。病変は肉眼的には下部胆管を中心とした白色の硬い全周性の肥厚であり,癌を強く疑わせた。しかし,組織学的には悪性所見を認めず,壁全層に及ぶ線維性肥厚と形質細胞を中心とした慢性炎症細胞浸潤が見られた。また,部分的に好酸球の浸潤及びリンパ濾胞の形成も認めた。術後経過は良好で,術後38日目に全治退院となった。以上,胆管狭窄をきたす疾患に関して,若干の文献的考察を加え報告する。 |