セッション情報 一般演題

タイトル 190:

下咽頭癌を合併した食道表在癌の1例

演者 田中 宏史(済生会熊本病院 消化器病センターDELIMITER自衛隊熊本病院 内科)
共同演者 郷田 憲一(済生会熊本病院 消化器病センター), 藤本 貴久(済生会熊本病院 消化器病センター), 多田 修治(済生会熊本病院 消化器病センター), 須古 博信(済生会熊本病院 消化器病センター), 浦田 譲治(済生会熊本病院 画像診断センター), 神尾 多喜浩(済生会熊本病院 病理), 土亀 直俊(熊本大学 放射線科)
抄録 症例は68歳、男性。2002年4月10日前医人間ドックで上部消化管内視鏡検査を受けた際、上切歯列より27~30cmの胸部中部食道に淡い赤色調の陥凹性病変を認めた。生検の結果、扁平上皮癌と診断され、精査加療目的にて2002年5月21日当科紹介され入院となった。X線造影では、病変は胸部中部食道に淡い不染帯として描出された。内視鏡検査では、病変部の肛門側で強い発赤調の陷凹を伴っており、深達度はm2、一部m3~sm1である可能性のある病変と考えられた。胸・腹部CT上、縦隔リンパ節をはじめ明らかな転移は認めなかった。5月29日内視鏡的粘膜切除術(EMR)を施行し、病変は3分割で切除された。組織学的には、深達度はm2で脈管侵襲は認めなかった。退院後、頭頸部精査のため、近医耳鼻咽喉科を受診した際、左顎下のリンパ節腫大を指摘された。吸引細胞診の結果、扁平上皮癌と診断された。頭頸部癌の合併を第一に考え、当科にて再度上部消化管内視鏡検査を行った際、左梨状陥凹近傍の下咽頭に淡赤色調の扁平な辺縁隆起を伴った陥凹性病変を認めた。ヨード染色にて病変部は不染帯を呈し、生検の結果、扁平上皮癌と診断された。早期食道癌に併発し、頸部リンパ節転移を伴った下咽頭癌と考えられた。現在、EMR後の食道には軽度の狭窄はみられるものの、遺残・再発の所見は認めていない。頸部リンパ節転移を伴った下咽頭癌に対しては、現在放射線・化学療法を施行中である。
食道癌に対する下咽頭部癌の合併は決してまれではなく、早期食道癌の診断と治療の際は、咽頭・喉頭部の詳細な観察とともに、エコー等による頸部リンパ節精査が必要であると考えられた。
索引用語 食道表在癌, 下咽頭癌